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駅の影
冷たいコンクリートの階段を登ると駅舎の蛍光灯が網膜を刺した。
午前六時。
早朝通勤客がまばらに改札を通過している。ヨシオは柱の陰に潜み様子を窺った。
(あのゴミ箱か)
ホームドア横の大型ダストボックスには「資源ごみ」のステッカーが剥がれかけていた。
近づくと衣料品店の紙袋や使い捨て容器に混じりファッション誌が何冊か見える。
「おいおっさん」
鋭い警告が背後から響いた。
反射的に振り向くと黒ジャージ姿の中年男性が睨んでいる。
同じホームレスと思しき相手が牽制してきたのだ。
「ここは俺のテリトリーだ」
男性の歯茎が剥き出しになりヨシオの脇をすり抜ける。
器用な手つきで雑誌類を漁り始めた。
この界隈にも縄張りがあるのか—ヨシオは無言で後退った。
(くそ……他に行くか)
諦めて別の出口へ向かう途中—自動販売機横の小型ゴミ箱に目が留まった。
空き缶やコンビニ袋に紛れ文庫本が一冊突き出ている。
「おっさん何してる?」
若者の声に慌てて手を引っ込めた。
キャップ帽の少年がイヤホンを外し怪訝な眼差しを向けてくる。
「いや……」




