底辺ビジネス
ペットボトルの生ぬるい液体を胃に流し込みながらヨシオは呻いた。
「明日……金になる物を見つけないと……」
川面に映る汚れた顔は四十代半ばとは思えぬほど老け込んでいた。
工場勤務時代の面影はない。
脂気の抜けた髪は白髪混じりだし頬骨は異様に浮き上がっている。
(あのまま柚希を犯していたら……)
最低の妄想に股間が反応し自虐的な笑いが漏れた。
だが同時に胸を締め付ける痛みが湧き上がる。
親族を性欲のはけ口にしようとした罪悪感が理性を保つ唯一の支えになっていた。
「よせよ……」
独り言が寒風にかき消される。
「お前はまだそこまで堕ちてない」
ふと頭に浮かんだ記憶—半年前までこの川岸で共に暮らしていたホームレス仲間の言葉だ。
『雑誌拾い?一冊五十円ならマシな方さ』
古紙回収業者が値下げを続けており最近では三十円にまで落ち込んだとも聞いた。
それでも新聞紙よりは嵩張る分高く買い取られるという。
ただ、自分で売るとなると話は別で百円で売れるそうだ。
「やってみるか……」
ヨシオはよろめきながら起き上がった。
腰が軋む痛みさえ今は些末なことだ。生存への執着が疲労感を超越していた。
夜明け前の川面がドス黒く一瞬吸い込まれそうになるが、気を持ち直し駅に歩を進める。
日の出はもうすぐそこだ。




