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真名と葛藤
「りんご?」
柚希の疑問形にハッとする。
そうだ—少女は自分の名前を偽っていたのか。
「あの子の名前は『林聖花』……だと思う」
尾行の際目にした表札の文字を思い出す。聖なる花と書いて「セイカ」か。
「セイカちゃん?なんでまた偽名を……」
柚希が不思議そうな表情を浮かべたその時、
「あっ!聖花ちゃんがいなくなっちゃう!」
林檎……いや聖花が角を曲がっていく姿に焦りが募る。
しかし柚希が強く腕を掴んできて進めない。
「おじさん!ちゃんと話を聞いて!」
必死の形相には少女時代にはなかった頑固さが光っていた。
「悪いが今は……」
言いかけた言葉を飲み込む。
このまま行ってしまったら姪を傷つけるだけでなく—何か大切なものを永遠に失う気がした。




