運命の邂逅
林檎の後を尾行するヨシオの視界に見覚えのあるシルエットが飛び込んできた。
青味がかった腰まで伸びるロングヘア―—間違いなく姪の柚希だ。
都心から離れた住宅街に居る理由が理解できずに動揺が走る。
「あ……おじさん!」
振り返った柚希の瞳が大きく見開かれた。
最後に会った時より少し背が伸びた気がしたが顔立ちは十代の少女そのままだった。
「久しぶり……」
言葉が喉に詰まる。別れ際に花音を紹介したのが遠い昔のように思える。
「どこにいるか教えてってLINEしたのに!」
憤慨した声色に罪悪感が押し寄せた。
ホームレス生活を隠し通していた負い目が膨れ上がる。
「すまない……携帯をなくしてしまって」
嘘だった。実は充電切れを放置してただけだ。
「携帯なんて……」
柚希の目に涙が溢れる。ヨシオの煤けた服装を見るにつれて嗚咽が込み上げてきた。
「どうして連絡してくれなかったの?」
人目も憚らず抱きついてくる温もりに呼吸が止まる。
成長した少女の柔らかな肢体が路上生活者の硬い胸板に押し付けられた。
「パパが……おじさんのこと心配してる」
父親の名が出た途端ヨシオの眉間に皺が寄る。
「父さんの命令で来たのか?」
厳しい口調に柚希が肩を震わせた。
「違う……私が自分で来たの」
泣き腫らした瞳で訴えかけるように見上げる表情には反抗期特有の強さが宿っていた。
その瞬間—
「あっ!りんごちゃん!」
林檎が前方で母親らしき女性と談笑している姿が視界に入る。
尾行対象を見失う焦燥感が理性を蝕み始めた。
(くそっ……せっかくここまで追ってきたのに)
葛藤する内心を見透かしたかのように柚希が身を離す。
「ねえ……おじさんの今の住所は?」
懇願する瞳には姪ではなく独立した一人の女性としての誇りが見え隠れしていた。
「悪いけど……教えられない」
ヨシオの言葉に落胆する柚希の背後に—林檎の姿が小さくなってゆく。




