性癖の覚醒
「ここは公共施設ですので浮浪者の方の利用はご遠慮いただいております」
業務的な通告の中に明らかな嫌悪感が滲んでいた。
「おじさんは浮浪者なんかじゃない!」
少女が立ち上がり警備員に真っ向から食ってかかる姿は豹変していた。
昨日の無垢な少女とは別人のように堂々とした態度だ。
「わかったよ……すまなかったね」
ヨシオが慌てて立ち上がると少女は一瞬寂しげな表情を見せたがすぐに明るく手を振った。
「またね!明日もここで会おう!」
その屈託のない笑顔を見送りながらヨシオは思う。
(この子は一体何者なんだ……)
残されたパンを大切にしまい込む掌には少女の体温がまだ残っていた。
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翌朝、同じ時間に同じ場所で待ち伏せするヨシオの瞳に欲望の火が灯っていた。
**「おはよう!おじさん!」**
昨日の少女が駆け寄ってくる姿を見るだけで胸の鼓動が速まる。
名門女子中学校の制服に跳ねる汗の粒子まで見分けられる鋭敏さは工場勤務時代にはなかった能力だ。
「今日はこれを……」
差し出されたサンドイッチを受け取りながら目線は常に少女の足元を捉えていた。
ローファーのかかとに貼られた小さな星マーク—きっと本人のお気に入りなのだろう。
「あの……君の名前は?」
問いかけた瞬間少女の頬が紅潮するのが見える。
「りんご……林檎っていうの」
はにかんだ笑顔の奥に何かを隠している気配を察知した。
フルネームではない簡易な自己紹介。この警戒心の根源にあるものは……?
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昼過ぎ、林檎が家路につく後を追う。
尾行は十八番だ。
路上生活で培った技能を犯罪行為に使う皮肉に苦笑しながらも足は止まらない。
(確か学校は坂の上の住宅街……)
ランドマークになる教会の尖塔を目印に追跡を続ける。




