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初夜の朝
―――
「花音……」
名前を呼ぶのが精一杯だった。舌が口蓋に貼り付くような脱力感—路上生活では水を得た後の渇きにも似た疲労感だ。
「おやすみなさい……」
囁くような挨拶と同時に瞼が重くなる。
若い娘特有の甘い体臭と汗の匂いが睡眠導入剤のように作用した。
「夢の中でまた逢いましょうね」
最後の言葉が幻聴のように聞こえた頃には—既に深い眠りの底へと沈んでいた。
―――
窓辺から射し込む朝陽が天蓋付きベッドを黄金色に染め上げていた。
鳥のさえずりが工場の始業ベルより優雅に響く。
「おはようございます……」
花音が睫毛を震わせながら目を開いた。
昨日までの初々しさは薄れ代わりに官能的な余韻が漂っている。
「おはよう」
ヨシオの声は掠れていた。
放出後に即寝落ちした反動だろう。
工場夜勤明けのような重い瞼を必死にこじ開ける。
「昨夜は……ありがとうございました」
少女の頬が朝陽より赤く染まる。
布団で隠した下半身の疼痛を意識しながらも—その眼差しは不思議な充足感に満ちていた。




