蕾の襲来④
その一言にヨシオの頬が引きつった。
『拾われた』という表現に込められた階級意識が鉄錆のように肌を腐食させる感覚。
花音本人に悪意がないからこそ余計に痛烈だ。
「ちょっと待て」
強引に制すると少女の瞳が絶望的に揺らいだ。
「私が……ヨシオさんと先にするつもりだったのに」
シーツを噛んで嗚咽を堪える姿は痛ましいほど純粋だ。大企業社長令嬢のプライドと十代女子の稚拙な独占欲が奇妙に混在している。
「いまから……」
涙で霞んだ目を凝らしながら花音が這いずるように接近する。
その指がヨシオの腹筋に触れ……慌てて裾を捲り上げようとする動きが拙すぎる。
「エッチ……します」
明らかに経験不足の手つきにヨシオの胸が締めつけられた。
彼女がどれほどの勇気を振り絞って深夜の客室に忍び込んだのかと思うと怒りや軽蔑よりも憐れみが勝ってくる。
「落ち着け」
掴んだ腕は驚くほど細かった。
柚希の腕と比較してもなお華奢だ。
彼女の震えを通して伝わる決意が皮膚を刺すように痛い。
「どうして邪魔するのです?」
花音の叫びは絹裂けるように哀切だった。
「あなたは私の所有物のはずなのに!」
その傲慢極まりない発言も必死さゆえの歪みだと分かる。
「聞いてくれ」
ヨシオがゆっくりと肩を押さえつける。
埃っぽい路地裏で暴漢を制御する要領と似ているが、遥かに神経を使う。
「俺達はまだお互いを理解していない」
「だからこそ知るべきです」花音の唇が小さく震える。
「あなたの……秘密の部分を……全部」
大胆な台詞の割に視線は宙を彷徨っている。
性的知識だけは豊富なタイプだな……




