三重奏の入浴⑧
ルシアがくすりと笑う。
「弟がいたらこんな気分なのかしら」
「私には妹だけですものね」
花音が微笑んだ。「でも今日は違います」
三姉妹の異なる反応─ルシアの余裕・花音の初心さ・リィファの頑なさ─
を一身に受ける奇妙な幸福を噛みしめながらヨシオは思った。(これが贅沢というものか)
あらいっこが終わると四人で仲良く湯船につかる。
湯船といっても普通の家庭風呂とはケタ外れの大きさで大理石がふんだんに使われ、映画のワンシーンに出てくるような西洋式の大浴場である。
湯船の真ん中には小さい噴水が湧き出ており滝のような流れがなめらかに注がれその周りを花が鮮やかに咲いており幻想的だ。
まさに高貴な貴族の入浴シーンである。
ヨシオもはじめて見るその光景に終始見惚れていた。
まるで異国に来ているような感じさえした。
ルシアがヨシオの頭を膝に乗せ頭皮マッサージをして花音は右にリィファは左に侍る様に横たわり身も心も幸福感が支配していた。
こんな日々が続くならばずっとこうしていたい、いやこれ以上の幸せはないと思えるぐらいにリラックスできていた。
だがやはり限界はあるもので。
だんだんと花音がリィファがうつらうつらとし始めた。これはのぼせてしまいそうですわとルシアが声をかける。
「ヨシオさんがここまで私たちにしてくれたご恩は忘れませんわ」
「私こんなに人と打ち解けたのは始めてかもしれません」
「でももう眠くなってきてダメみたいです。ヨシオさんに感謝申し上げます」
と言ってフラフラした足取りでバスローブを纏い脱衣所へ消えて行った。
「ふぅ〜私も結構ギリギリですわ。久しぶりにリラックスできた様な気がします」
「私も少し休みますわねヨシオさん。あとよろしくお願いしますわ」
といってルシアも風呂を後にした。残されたヨシオとリィファ。
「お姉様方もヨシオさんから解放されて安心してるのでしょうね」
「俺にはもう興味がないみたいだな。しょうがないとはいえ寂しいもんだな」
「いいえお姉様はまだ何か考えてると思います」
「何が言いたい?」
「何も申し上げる事はありませんわ」
「じゃあなぜ俺を庇ったんだ」
「庇ったつもりはありませんがあなたが入ってこれば良いと思ったのです」
「どういうことだ」
「とにかくお父様とお姉様方はあなたを手招きしていると言うことです。それに私も気になっています」
「そうかなら良かったな。それで聞きたいのだが」
「なんでしょうか」
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