入浴の誘い②
ルシアの声が部屋に響いた刹那、花音の表情が凍りついた。
リィファのフォークが皿に当たって軽く音を立てる。
「えっ」
「ルシアお姉様!?」
二人の妹が同時に叫んだ。
「何か問題でも?」
ルシアはカップを置くと優雅に立ち上がった。
「汚れを洗い清めるためには適切な処理が必要でしょう?」
「しかし姉上」
リィファが口を開きかけて止まった。
ルシアの目には明らかな意図が宿っている。
「お客様に不快な思いをさせてしまって誠に申し訳ありません」
彼女は深々と頭を下げた。「そのためわたくし自ら禊ぎを行うべきかと存じます」
「そんなことできるわけ──」
「できますわ」
ルシアの声には揺るぎない自信があった。
「宮廷式の作法通り行えばよいのですから」
「待ってくれ」
ついにヨシオが割って入った。「そもそも俺のような庶民が」
「身分は関係ありません」
ルシアが彼の言葉を遮る。
「ただ汚れを祓うだけのこと」
その時メイドが現れ「浴室の準備完了いたしました」と報告した。
彼女はティーセットを片付け始める。
「さあ行きましょう」
ルシアが自然な動作でヨシオの腕を取る。
その触れ方は羽根のようでいて抵抗を許さぬ強さを秘めていた。
「お姉様!?」
花音の悲痛な声が聞こえる。しかしルシアは一切振り返らなかった。




