【混沌の公園】②
ヨシオの目が見開かれる。
花音が拾ったということは──
「橋の下の……!」
「ピンポン」
少女の笑顔が憎らしいほど美しい。
「掃除の時に見つけました。綺麗なものばかり使っているわけではないようですけどね?」
「この盗っ人め」
喉まで出かかった罵倒を堪える。相手は金持ちの令嬢だ。
「まぁまぁ」
花音は犬の腹を掻く。
「この子を通じて私達は繋がっているんですわ。一種のパートナーシップみたいなものですね」
「冗談じゃない」
「でも考えてみてください」
急に声を潜める花音。
「警察に捕まるよりマシでしょう?」
「……」
「ホームレスによる未成年誘拐未遂なんてネタ提供したら面白そうですけれど」
「お前……」
「ですから提案なのです」
花音の瞳が妖しく光る。
「私たち同盟を結びません?」
「同盟だと?」
「えぇ」
犬の頭を撫でる手を休めず告げる。
「あなたは柚希さんに手を出さない代わりに私は警察沙汰にしない。完璧な相互補完体制です」
「俺に何のメリットが?」
「合法的な生活基盤」
少女の口から予想外の言葉が出る。
「ホームレス脱却の支援を致しましょう」
「何……?」
「ただし条件ありですわ」
「どんな条件だ?」
「秘密保持義務です」
「ふざけるな」
「本当はもっと面白い方法もありますけど」
花音が屈み込むヨシオの耳元で囁く。
「例えばこの子を使ってゲームしたり……」
「やめろ」
即座に立ち上がる。
こんな脅しには屈しない──はずだった。
だが少女の言う通り現状打破の手段はあるに越したことはない。
それに警察沙汰になれば柚希にも迷惑が及ぶだろう。
「少し考えさせてくれ」
苦し紛れに出た言葉だった。
「賢明な選択だと思います」
花音は犬を地面に下ろし去ろう




