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【仮初めの絆】
十字路を曲がった時だった。
「あっ……」
柚希がよろめいた。「ごめん……」
バランスを崩した彼女がヨシオの腕にしがみつく形になる。
密着度が極限まで高まった瞬間──
「手……貸して」
唐突に彼女が求めた。
ヨシオの持つ傘の柄に右手を添え左手で彼の腕を支える。
「こうすると安定するでしょ?」
「勝手にしろ」
吐き捨てるように言いながらも抵抗しない。
むしろ腕の筋肉が弛緩し彼女の体重を受け入れる準備をしている。
そのまま無言で進む。
路面を叩く雨音だけが周囲を支配していた。
信号待ちで足を止めた時ふと彼女が顔を上げる。
「今日は……ありがとう」
「礼を言われる覚えはない」
素っ気ない返事だが傘を持つ手に少し力が籠もる。
「危ない目に遭わせたしな」
「それでも来てよかった」
柚希の視線が街灯に照らされたヨシオの横顔を捉える。
「雨だって……こんな機会くれたわけだし」
「皮肉屋め」
苦笑した拍子に肩が触れ合う。
布地を通して伝わる熱に二人とも息を呑む。




