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密着の雨傘【天からの贈り物】
駅へ向かう途中、空気が急に湿り気を帯びた。
「おい……」
ヨシオが上空を見上げた瞬間だった。
ぽつり。
「あ」
柚希の声と同時に水滴が頬を打つ。
次の瞬間には大粒の雨が降り注ぎ始めた。
「くそっ!」
ヨシオは咄嗟に折りたたみ傘を広げる。
「入れ!」
躊躇いなく柚希を招き入れる動作には迷いがなかった。
二人の肩がぴたりとくっつく距離感に彼女の方が赤面する。
「ちょっと寒いね……」
柚希が呟くと同時に肩を擦り寄せてきた。
制服越しの体温がじわりと伝わる。
「傘……ありがとう」
「気にするな」
ヨシオも微かに体を傾け庇いながら前へ進む。
「それより足元気をつけろ」
歩幅を合わせる二人。
かつてホームレスだった男が今では少女を雨から守る存在になっている不条理さ。
「なんだか……」
柚希がぽつりと呟く。
「恋人みたいだよね」
「……馬鹿なこと言うな」
叱責する声も心なしか柔らかい。
だが指先は傘柄をきつく握りしめている。
「こんな状況だから仕方なくだ」
「分かってる」
彼女は小さく笑った。「それでも嬉しい」
沈黙が落ちる。
だがそれは苦痛ではなく甘い蜜のようだった。




