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【嵐の後の静寂】
「助かった……」
柚希が壁に凭れかかる。
「どうやって言い訳思いついたの?」
「必死だったさ」
ヨシオは疲弊した笑みを浮かべた。
「それより─」
彼は真剣な眼差しで彼女を見る。
「今のことだけど……」
「言わないで」
柚希が遮った。「全部忘れて」
それは拒絶ではなく保留だった。
その証拠に彼女の指先がそっとヨシオの袖に触れている。
「午後から雨になるらしい」
不意に窓の外を見やるヨシオ。
「帰るなら今すぐの方が良いな」
「……一緒に帰れない?」
囁くような声で彼女が尋ねる。
「無理だ」
即答したが表情は柔らかだった。
「せめて駅まで送ろう」
柚希の頬に微かな紅潮が戻る。
「それで充分」
二人は並んで校門を出た。
先程までの激情が嘘のように平静を装う男女。しかしその脈打つ心臓の音だけは隠せなかった。
「次はどうするの?」
階段を降りながら柚希が問う。
「まずは現状維持」
ヨシオは答えた。「だが……」
「だが?」
「いずれ決断は必要だろう」
その言葉に柚希の掌が彼の手首に触れ──すぐに離れた。




