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【駆け引きの幕開け】
ヨシオの頭脳がフル稼働した。
「左側のファイル棚を移動させる」
小声で指示を出す。
「鍵を開けたらすぐに我々は右の隅に潜む。彼女は鍵を持っている可能性が高い」
「無謀よ!」
柚希が非難する。
「狭すぎるし……それに……」
言葉尻が霞んだのは彼女自身が緊迫した状況を認識している証拠だった。
「他に手はない」
決断を下す。「3秒で準備しろ」
#### 【隠蔽工作】
ヨシオが先導し巨大な金属製のキャビネットを無理やりズラす音が室内に響く。
ほんの数十センチだが死角を形成するには十分だった。
柚希はハンカチで目元を拭い乱れた髪を手櫛で整えている。
「行くぞ」
ヨシオがドアに向かう刹那──
バン!!
鍵穴の機構が外れる音と共にドアが吹き飛ぶように開いた。
「柚希さん!?」
紗月が飛び込んできた。
制服姿のまま大きく息を切らせている。
彼女の視線が部屋全体を舐めるように走る。
「一体何が……」
その言葉が途切れたのはヨシオが作り出した即席の死角に二人が佇んでいることに気づいたからだった。




