02-07.いつもの笑顔
「おはよう♪ マリー♪」
「お姉様! もうお加減は……いえ。おはようございます」
「はい♪ おはよ♪ アミはどこかしら?」
「昨晩お出かけになられましたわ。未開拓領域の警備を検めると。それから今に至るまで戻られてはおりませんわ」
「まあ! 嫁いだばかりのお嫁さんを放っておくなんて!」
「いえ! それは!」
「手が離せないのなら連絡の一つも寄越すべきだわ!」
「お姉様……」
「少し様子を見てくるわね♪ ヴィオラ♪ マリーをお願いね♪」
「はい。ステラ様」
「どうかお気をつけて。お姉様」
「ふふ♪ ありがとう♪ マリー♪」
ステラお姉様はそのまま飛び立たれてしまわれました。
「お姉様……」
「ご安心を。ステラ様は誰より強きお方です」
「それでも心配ですわ。あのようなお顔をされては」
「領主様と戻る頃にはケロリとされておりますよ」
「内に隠しただけですわ」
「はい。まさしく。それができるお方なのです」
「そんなもの……」
「あのお方の心は広く深い。私共の想像も及ばぬ程に」
「それは言い訳ですの? 主の心を慮るのは従者の務めではございませんの?」
「ステラ様を甘く見ないで頂きたいのです」
「そんなつもりはありませんわ」
「であれば、どうかそのようなお顔をなさらないでくださいませ」
「……わたくしが、ですの?」
「今のステラ様がお求めになられているのは共感などではございません」
「……笑顔で出迎えますわ。次こそは。必ず」
「感謝致します。奥方様」
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「アミ!」
「やあ、ステラ。おはよう。今朝は元気そうだね。迎えに来てくれたのかい?」
「お説教よ。よくも私の大切な義妹を不安にさせたわね」
「ああ。そうだね。マリーには悪いことをしてしまった」
「ガルディオンの件も話してしまったのでしょう? 悪い子ね。わざわざそんな話をした上で放置するだなんて。お姉ちゃんカンカンよ。あの子の気持ちも少しは考えなさい」
珍しく真面目なお説教だ。
「悪かった。すぐに戻るよ。運んでくれないかい?」
「よろしい」
ステラは僕を抱き上げて再び空へと舞い上がった。
「この体勢は恥ずかしいな」
「逆がよかったかしら?」
「そうだね。僕が飛行魔術を扱えたらよかったのだけど」
僕でも身体強化は扱えるから、地上を走るだけなら馬より速いくらいなんだけどね。
「いくらあなただからって一人で行くのは無謀すぎるわ。どうして声を掛けてくれなかったの?」
「すまない。急を要すると判断したんだ」
起こせるわけないじゃないか。ステラだってわかっているだろうに。
「あなたは領主よ」
「そうだね。これっきりにするよ」
本当に。自ら走り回るだなんて柄じゃないよね。
「約束よ。今度こそ違えたら許さないわ」
不安になってしまったのはステラの方だったんだね。
「ステラ。少しだけ寄り道をしていかないかい?」
「あなた」
「マリーの為だよ。今の君が一緒に戻ったんじゃ彼女の不安は拭えないよ」
「……ごめんなさい」
「ううん。ステラのせいじゃないよ。何一つ。ステラのせいじゃない」
「……何処に行くの?」
「そうだね。少し領都を歩こうか。冒険者向けの食堂にでも行ってみようよ。実は気になってたんだよね。ステラも朝食はまだでしょ?」
「ならお勧めを紹介するわ」
「是非お願いするよ♪」
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「うん♪ 美味しいね♪」
「でっしょ~♪」
ふふ♪ アミは本当に美味しそうに食べるわね♪
「ねえ、ステラ。今日はどうするの? また依頼?」
「そうね。いくつか溜まっているみたいなの。ぱぱっと片付けてくるわ」
「僕も付き合っていい?」
「そんな暇は無いでしょ。あなたは先に睡眠を取りなさい」
「ならマリーが一人になってしまうね。代わりに連れて行ってくれるかい?」
「ダメよ。マリーだって寝ていないに決まってるじゃない。今朝だって……いえ。とにかく添い寝でもしてあげなさい」
「ならステラもさ。三人で一緒にお昼寝しようよ♪」
「もう少しあの子の伴侶として自覚を持ちなさい」
「厳しいなぁ~」
「本当にお説教されたいのかしら?」
「わかった。もう言わないよ。今日のところはね」
もう。アミったら。
「ごちそうさま。さてと。帰ろっか」
「私はこのまま」
「ダメだよ。マリーを不安にさせたのはステラもだ。一度帰って顔を見せてあげて。そうでないと安心出来ないよ」
「……そうね。行きましょう」
「ほら♪ 笑顔笑顔♪ 忘れないで♪」
「……ええ♪」
大丈夫。大丈夫。大丈夫。私は笑えているわ。
本当よ? ガルディオン。だからどうか心安らかに。
いずれ必ず……。




