02-03.姉姉妹妹
「そういうわけだから。今後はくれぐれも大人しくしていてね。わかった?」
「「はい♪」」
良いお返事。いつも返事だけは良いんだよなぁ~。
「ヴィオラ。極力大きな町は通らないように予定ルートを変更しておくれ」
「承知いたしました」
「追加の補給は必要かい?」
「問題ありません」
「なら予定通り明日出発だ」
「畏まりました」
よしよし。流石ヴィオラだ。
「それからマリー。今後は王女と名乗ってはいけないよ。マリアルバも無しだ。君は今からマリーだ。ただのマリー。当面の間は我慢していてくれるかい? 不自由をかける僕を許してくれるかい?」
「当然ですわ! アミ様!」
「ありがとう。マリー」
「わたくしはアミ様のマリーですわ♪ 遠慮は不要ですわ♪」
「そうだね。どこまでも僕についてきておくれ。マリー」
「はい♪ ですわ♪」
風変わりなお姫様だ。
もしかしたらマリーは愛に飢えているのかもしれない。自分だけの家族が嬉しいのかも。……そんな玉じゃないかな。
「ステラ様」
「は~い♪ ちちんぷいぷい~♪」
ヴィオラが用意した桶にステラが魔術でお湯を張った。
「ステラからで構わないよ」
視線を向けてきたヴィオラに先んじて言葉を返す。
「マリーからにしましょう♪ お姉ちゃんに任せなさい♪」
「お願いしますわ♪ お姉様♪」
仲の良い姉妹だ。ちょっとジェラシー。
「僕はもう一度出かけてくるよ」
「ダメよ♪」
「ダメですわ♪」
なんでさ。
「いけません。領主様。ご自身で仰られたことではございませんか」
「大丈夫だよ。下で一杯やってくるだけだから」
ここはセントリア一の高級宿だ。バーだって併設されている。外での活動と出入りにさえ気をつければ、そうそう情報が漏れることもないだろう。給仕も客も弁えている筈だ。
「だったら皆で行きましょう♪」
「賛成ですわ♪」
皆が洗体を済ませてからでは遅くなってしまうよ。
「食事もまだですから。領主様以外」
ヴィオラがチクリと刺してきた。
「わかった。なら手早く終わらせるよ」
「「は~い♪」」
明日は朝早くから旅立ちだ。遅くなる前に済ませないと。
綺麗好きなステラはいつも長風呂だ。身体を拭くだけでも結構な時間を要する。
逆にマリーは効率重視だ。自分のことはさっさと済ませてステラや僕の背を磨くことに執心している。とは言えステラに磨かれるのも好きだから、結果的に時間をかけてしまう。
ヴィオラが本気なら僕らが気付かない内に済ませてしまえるのに、大抵は悪乗り便乗してくるタイプだ。ある意味付き合いが良いとも言える。単にいい性格してるだけでもある。
さっさと自分たちの分を終わらせてステラを皆で磨き上げるのが手っ取り早いか。ヴィオラも流石に今晩は自重してくれるだろう。後はステラがいつ満足するかだけだね。
「うふふ♪ お美しいですわ♪ お姉様♪」
「ありがとう♪ マリー♪」
まったく。僕のステラにベタベタ触りすぎだよ。ステラもステラで許しすぎ。僕だってまだそこまで触ってないのに。
「わたくしのは大きくなりませんの」
こら。人前で胸を揉むのはおやめなさい。仮にもお姫様でしょうが。元だけど。
「お姉様♪ 秘訣を教えてくださいませ♪」
「う~ん。遺伝かしら?」
ひどい……。
「揉んだら大きくなるとも言うわね♪」
「なるほど!」
おいこら。
「好きな人に揉んでもらえば確実よ♪ 吸われると効果倍増よ♪」
「アミ様!」
「やらないし、やってないから。嘘教えないでよ、ステラ」
「え~♪ きっと真実よ~♪ だって~♪」
「揉まれたんですの!?」
「えへへ~♪」
「誰ですの!? お姉様の好きな人とは!? アミ様ではありませんの!?」
「もちろんアミに決まってるじゃない♪」
「僕はやってないよ!? 誰と勘違いしてるのさ!?」
「あるわよ♪ 小さい頃♪ いつも寝る時はお姉ちゃんのおっぱい揉んでたんだから♪」
「吸ったんですの!?」
「覚えてないよ!?」
本当に小さい頃のやつじゃん!
「さあ! アミ様!」
「やらないよ!?」
「お姉ちゃんのも♪」
「なっ!?」
……んだと!?
「ガン見してますわね」
「チャンスですよ。領主様」
「遠慮は要らないわ♪」
「や、やらないよ!?」
ちくしょう! 弄びやがって!
僕だって! 僕だってなぁ! せめて二人きりなら!!
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「はぁ……」
「惜しかったですね。領主様」
「黙れ」
「はい。領主様」
意地の悪い姉だ。僕の姉はそんなんしかいないのか。
「これ美味しいですわ♪ あ~んですわ♪」
「あ~ん。もぐもぐ……うん。美味しい」
「次はこちらですわ♪」
自分でお食べよ。マリー。
「元気ありませんの?」
「やっぱりも」
「まない」
こんな所で何を言うつもりなんだ。このダメ姉は。
「そろそろ引き上げるよ。明日は早いんだ」
「もう少しくらいいいじゃない♪ お姉ちゃんがどうとでもしてあげるわ♪」
本当にどうとでもしてしまえるかもだけどさ。
「約束したでしょ。少しだけだって」
「マリーがまだ食事を済ませていないわ」
そういうステラもね。ステラは食事が遅い上に健啖家だから。あんな細い身体してどこに栄養がいってるんだか。やっぱ胸か。あの暴力的なサイズを維持するには大量の食事が必要なのか。この一年で驚く程成長したもんなぁ。魔力として漏れ出している分もありそうだけど。
「わたくしもう十分頂きましてよ?」
「大きくなりたいならもっと食べなきゃダメよ♪」
「がってんですわ!」
無茶させないでよ。マリーは今のままで十分可愛いんだから。
「領主様。そういう事は口に出してお伝えすべきかと」
しれっと人の心を読む君はなんなのさ……。
「アミ様♪」
「うん?」
「わたくしいっぱい大きくなりますわ♪」
「程々でいいよ」
「そうですわね♪ バリエーションは必要ですわね♪」
「そういうんじゃなくてさ」
「小さい子がお好きですの?」
「ありのままでいておくれ」
「今のわたくしがお好きだと言ってくださるのですね♪」
「そうだよ。マリー。僕は今の君が気に入ってるんだ」
「感激ですわ♪」
「ほら。食事中に抱きつかない」
「あ~ん♪ イケズですわ~♪」
「ふふふ♪」
「なにさ、ステラ」
ニヤニヤしちゃってさ。
「愛しの妹たちが仲良しなんですもの♪ お姉ちゃんは嬉しいの♪」
けっ。何が妹たちさ。ステラの妹は僕だけだろ。
「アミ様ジェラってます?」
「そうです。領主様はステラ様を独り占めしたいのです」
僕は何も言っていないのにどうしてこう見抜かれてしまうのか。顔や態度に出さない程度の自制心は働かせている筈なのだけど。
「ふふ♪ アミ様とっても可愛いですわ♪」
「でっしょ~♪」
うっさいやい。
「先に戻る」
「なりません。領主様」
なんでさ。
「どんな時でも奥様方に寄り添ってこそ、領主様に相応しき甲斐性にございます」
「皆して虐めるくせに」
「愛ある弄りにございます」
「従者のくせして主を弄るのはやめてもらえる? せめて君だけでもさ」
「私はステラ様の専属でございます」
ああ言えばこう言う。
「もう。わかったよ」
こうなったら自棄だ。一番強いやつ頼んでやる。




