そのふたつ弍/02「 ぼく と もく 」
ボク と モク の付き合いは、 とても長い。
「付き合い」 という言い方が 合っているのかどうかというと、 多分 全く合っていなんだけど。
モクは、 ボクが四歳の時に ボクの中にやってきた。
「 イマジナリー 」 と呼ばれるもの だ。
モクには、 モデルとなっている 「ヒト」 がいたそうだ。 お父さんが 昔一度だけ話してくれたことがある。
実在していた 「ヒト」。
お母さんの お兄さんだった 「ヒト」
小さい頃に 行方不明になってしまったんだそうだ。
行方不明、 というか 「カミカクシ」 だったんだ と、 その時 お父さんは言っていた。
昔の そのお兄さんの映像を、 不自然に荒いデータの記録を、 その時見せてもらったんだけど。
今のモクとは 似ても似つかない見た目だった。
だって、 映像で見たその子は まだ五歳くらいの小さな男の子だったから。
今のモクの姿は、 お母さんが想像で描いた 成長したお兄さんの姿 だということらしい。
しかし。
その話が 本当のことだったのかどうか、 実は ボクはちょっとよく分からないでいる。
あれ以降、 気になって もう一度お父さんに話を聞こうとしたんだけど、 なんだか誤魔化すような感じで話してくれない。
お母さんに聞くことは出来ない。
お母さんは、 ボクが四歳の時に。
モクが、 ボクの中にやってきた直後に、 |い な く な っ て《カミカクシにあって》 しまったから。
− 妹 と 兄 が、 向うの世界とこちらの世界で、 入れ替わり 取り換えられた −
そんな お話を思い付いてしまったのは、 ボクがもっと大きくなってからの事だったけれども。
何となく 「おとぎ話」 っぽい そのイメージは、 ボクの頭の隅にこびりついてしまっている。
少し怖い 「おとぎ話」。
だからって言う訳じゃないけど、 モクは ボクの中で お母さんのイメージと重なってしまっている処がある。
・・・ 口うるさいお母さん ・・・
本当のお母さんの事なんて、 全く思い出せないんだけども。
・・・・・・・・・・・・
家全体を覆っている奇異な静寂に、 違和感 と 嫌な予感 を感じながら 二人 は家から出た。
集学(集団学修) が行われている 「肥土山イエナクルーシブセンター」 まで、 いつもの登学ペースで 約30分。
モク が連絡している予定時刻まで あと25分。
かなり 急ぐ必要がある。
ミシルを急かそうと、 モクが口を開きかけた その時。
突然、
ミシルの視界の左上、 「通知情報エリア」 に キャラクターアイコンが現れた。
「 みぎわ先生 」 の着信用キャラクターだった。
三種祇 汀 (みくさぎ みぎわ)
集学プログラムにおいて、 ミシルが参加している小グループの指導補助を行っている副担当の先生(実習生) だ。
いつも、 主担当である 「 ロクちゃん先生 」 のいい加減な言動に振り回され、 尻拭い役に成り果てている かわいそうな先生だった。
ミシルが目線と指のスリックで受信承認を行うと、 アイコンが裏返り、 [SoundOnly] の表示となり、 音声通信が始まった。
歩行中の安全規定のため、 強制的に音声通信モードに切り替わっている。
「 観知さん、 もう こちらに向かっていますか? 」
「 あっ 先生、 ごめんなさい。 あと3分で着きます。 」
ミシルは かなりな鯖を読み、 すぐバレる無意味な嘘をついてしまう。
「 こちらこそ御免なさい。 ちょっと連絡が遅れちゃって 」
「 今日、 急に休学になっちゃったの 」
みぎわ先生の口調に、 僅かにイラっとした感情が混じっていた。
ミシルは、 その状況の元凶に検討がついてしまった。
「 また、 ロクちゃん先生ですか? 」
「 急に用事が入った とか言って、 いつの間にかいなくなっちゃたのよ 」
「 全然連絡も繋がらないから、 私 今から鹿砦先生の家に行ってみるんだけど ・・・ 」
「 ということで、 今日の集学はお休み。 観知さんも家を出たばかりみたいだったからよかったわ 」
バレていた。
「 明日の予定も、 ちょっと分からないから また連絡するわね。 じゃあ おやすみなさい 」
ミシルは帰って、 また 寝るものと決めつけられていた。
今季(秋季) の集学で、 ミシルが参加している 小グループの担当教員 「 ロクちゃん先生 」
鹿砦 央海 (さかもぎ おうみ) 先生のあだ名だった。
ミシルの父親である 八首 高瀧 (やがしら たける) [ 旧姓:佐伯 ] の旧友らしい。
前季(夏季) の集学で初めて会った時に知った事だったが、 そのせいか ミシルに対する態度は 始めから少し馴れ馴れし過ぎていた。
しかし、 直ぐに分かったのだが ロクちゃん先生は誰に対してもほぼ同じ態度であった。
そして、 それ以上にいい加減で無責任だった。 ( いい意味? で? )
そういう所が、 生徒のみんなには人気があるらしい。
一部を除いて。
実際、 モク は毛嫌いしていたし、 他の生徒達のイマジナリーからも 大抵嫌われていた。
( イマジナリー達の思考は、 パートナーである生徒を危険から守る事を優先させるているため 仕方がない事ではあった。 )
モクの一押しは、 ミギワ先生だった。
「 まぁーた! あいつか! 」
事情もよく分からない状況で、 モクは必要以上に怒って 文句を言っていた。
「 何か大変な事があったのかもよ 」
「 絶っっ対、 無い!! 」
「 まあ、 ボクが寝過ごしたのも悪かったし。 」
「 ・・・・・・ いや、 それは本当に関係ない。 」
急に冷静になる モクだった。
小説投稿サイト 「カクヨム」にて、
並列ストーリー
「 つくもぶね [ 境外宇宙より来襲する超常天体に抗する3人の厄災級異才者と人造意識体たち ] 」
を 投稿中。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073160539410




