そのよっつ壱/02 「 シマ と キョロ と 」
「 どうする? 帰って寝るか? 」
モクは ミギワ先生のふざけた会話を真に受け、 妙な提案をしてくる。
「 そんな訳ないよぉー もう! 」
笑って返しながら、 ミシルは 頭の中で今日の予定をぼんやりと組み直していた。
「 集学 」が終わってから 昼の3時位から、 と考えていた 今日のお楽しみの予定が繰り上がり、 朝から一日中遊べる事に ニンマリ する。
「 シマちゃん 今 何処にいるか見える? モク 」
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: 朋田 静眞 ( ともだ しじま ) 『 シマちゃん 』
ミシルが こちらに越してきて初めてできた友達で、 数少ない同い年の遊び仲間だった。
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モクは、 少し考えるような素振りをし、
「 かぶきの八幡さん の辺りに居るな。 一キロ程先だけど、 こっちに歩いて来てるみたいだぞ 」
と言いながら、 ミシルの視界に地図を表示させた。
今 ミシル達の居る、 昔の千枚田の石積みが連なる丘の中腹から 人工石で舗装された坂道を 西に 1,200m程 下ったところ、
可愛いいイラスト風に描かれた立体地図の上に、 デフォルメされた「シマちゃん」のアイコンが表示されている。
そのアイコンに視線を合わせ、 人差し指を弾いて (フリックし)通信ラインを飛ばす。
フリックした指先から赤い糸が、 実際にシマちゃんがいる方角に 物体としてはあり得ない速度で延びていき、 あっという間に接続される。
シマちゃんとの通信ラインが繋がったことが、 糸の振動で指先に伝わる。
地図上の アイコンも 赤い点滅枠表示となり、そこに表示されている デフォルメ シマちゃんも、 接続に気が付き こちらを振り向いて手を振っている。
シマちゃんとは 通信承認の事前パスを あらかじめ通してあるので、 呼び掛けは 即時可能となる。
「 シマちゃーん! 」
「 あっ キョロちゃん。ちょっと待っててね 」
呼びかけに答えたのは 本人ではなく、 シマちゃんのイマジナリーの 『 ラッテ 』 だった。
[ キョロ ] とは、 静 眞 がミシルにつけたあだ名で、 ラッテ もミシルのことを そう呼んでいた。
何にも無いところで 急に周囲をキョロキョロ見回す 引っ越した当時のミシルの癖が面白かったらしく、 会った初日から この呼び名だった。 何かゴゾゴゾとしている気配があったが、 直ぐに 本人の平面化されたリアルタイム映像が アイコンと入れ替わり表示される。
「 ごめーん。 私も今 キョロ に繋げようとしてたとこだったの 」
「 それはそれはシンクロウだねー ・・・そうっ! 今日 ロクちゃんのおかげで ラッキー休学だってね。
今から 何するっ・・・。 そうだっ・ この前のゲームの続きどう?
ほら、 この前 ボクのターンになる前に 中途半端に終わっちゃったから・・・。
今、 神社の辺りに居るんだよね・・・。 また、そこで待ってって・・・たぶん5分くらいだから 」
やはり、 ミシルの 距離–時間感覚 はズレていたが、 それは シマちゃんも十分理解済みの問題のため 二人の間では問題無かった。
「 いいけど・・・ だけど、 今日 お姉ちゃんが病院から帰ってくるから・・・ 1時くらい迄だけど、 いいかな? 」
「 えっ 残念。 いいよ いいよ。『 イーちゃ 』が帰ってくるんだね・・・久しぶりだね 」
「 調子はいいみたいって、 お母さん 言ってたから、 ちょっと落ち着いたら また お姉ちゃんと三人で ゆっくり遊ぼっ 」
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: 朋田 唯色 ( ともだ いいろ ) 『 イーちゃ 』
静 眞 の 5歳年上の姉であったが、 病院での生活が長く ミシルも2回ほどしか会った事が無かった。
現在 18歳の「お姉さん」であった、 筈であった。
しかし 病気のため、 体と精神の成長が 罹患した6歳時点で止まってしまっている。
[ アナイシャ症候群 ] と呼ばれる、 世界でも11例の記録しかない かなり珍しい症例の一種ということだった。
実際、 普通に見ると シマちゃんの「 妹 」としか見えないし、 ミシルも最初は 可愛い妹ちゃんだと思ってた。
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「 じゃあっ とりあえず、急いでそっち行くから、 ちょっと待ってててって
あれから結構 作り込んだからね。 今日のぼくは 一筋縄とは言わせないよー 」
シマちゃんとの接続を切り 急に走り出すミシル。
「 モク! 走るよ 」
「 いや、それは走り出す前に言えよ! というか、無理だろっ! お前 そんなに走れる訳無いからっ 」
モクの言葉を聞く様子も無く 一人 走り出したミシルだったが、 案の定 50m先で 立ち止まり 息を切らしていた。
少しふらつき、 息を切らしながら 空を見上げる。
神社の上の空に、 ちょうど真上に、 薄い虹色の輪っか状の雲が浮かんでいるのが 目に入った。
ミシルにだけ見えていた。
そして、その奇妙な雲の出現と結びつけられる状況に、 予兆のような現象に ミシルは 覚えがあった。
「 ・・・あれっ・・・『 リチくん 』 も いるのかな? 」
「 アレ がいるのかっ! 」
モクは顔をしかめる。
つい 一ヶ月前に、 その神社の境内でミシルが出逢った『 りち 』と名乗る少年を モクは警戒していた。
その少年は 最初から 明らか過ぎる怪しさだらけだった。
違法スレスレのレベルにまで踏み込んで情報を探ってみたモクであったが、『りち』の正体は結局 不明であった。
全く 何も情報が出てこなかった訳では無い。 出てくる情報が 常識的に有り得ないものばかりだったためだ。
「 やっぱり、 帰って寝ることにしないか? アレ はちょっと危険だって 」
「 モクは リチくんを警戒しすぎなんだよ! シマちゃんにも紹介するいい機会なんだから! 行くよっ 」
「 お爺ちゃんも、 別に心配しなくっていいって。 大丈夫だって言ってたじゃない 」
モクは、 孫に関する事には かなり慎重な あの お爺さん の あまりにも気軽な「リチ」に対する評価に 逆に不安を覚えていた。
ミシルは、今度は 普通に歩き出した。
「 行くよっ 」
何かあった場合、すぐに対処が可能な連絡相手の 接続確保だけは行っておく必要があると、 モクは コッソリ準備を始めていた。
小説投稿サイト 「カクヨム」にて、
並列ストーリー
「 つくもぶね [ 境外宇宙より来襲する超常天体に抗する3人の厄災級異才者と人造意識体たち ] 」
を 投稿中。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073160539410




