五月蝿い女子大生
田端では、山手線に乗り換える人が多いため、多くの乗客が下りた。まだ二十分ほど乗っていなければならない。田端から乗ってきた人の中に、迷惑な乗客はいなさそうであった。
廣瀬は眠気を催し、目を瞑った。目を瞑っているだけでも、脳は休んでいるということをテレビで観た気がする。「まもなく西日暮里、西日暮里。お出口は右側です」車内には、アナウンスと電車の走行音だけが響いている。何人か乗客が乗ってきたのが目をつむっていても分かった。
突然、やたら甲高い声が耳に入ってきた。「こないださー、グレイテストショーマン観に行ったのー。超感動したー」「うちも観たよー」「ヒュージャックマンかっこよすぎっ」どうやら女子2人組が乗ってきたようだ。しゃべるのは構わないが、声がかなり大きい。
目を開けてみると、どこにでもいそうな(息子が言うには量産型というらしい)女子大生らしき2人が廣瀬の前に立っていた。一人は背が高くて、足が長く、モデルのようなスタイルであった。しかし、顔はいまいちだった。もう片方は小柄であるが、胸が大きく、美人だった。廣瀬はこっちの子のほうが好みであった。2人とも化粧をばっちりしている。
「OOちゃんのインスタかわいい」顔だけ残念女が言った。なかなかうるさい。
「沖縄旅行うちらもしたいなー」巨乳美人が答える。私も出来るものならしたいよと廣瀬は心の中で思った。
「最近ジュンヤ君とはどう?」どうやら巨乳美人には既に彼氏がいるようだ。
「こないだ一緒にイルミネーション見に行ってきたー」イルミネーションの何が良いのか廣瀬には分からない。あんなのただのライトじゃないかと思う。
廣瀬は会話を聞いているうちに、女は本当におしゃべりだとつくづく思った。いろんな話題から話を展開させていくのがうまいと思う。うるさいのにも関わらず、迷惑な客が多かったからだろうか、廣瀬はそこまでうるさいことに気にならなかった。そうしているうちに、上野駅に着き、女子達は降りて行った。降りた後も何気なく女子達を眺めていたら、階段がドアの近くにあるにもかかわらず、降りた乗客とは反対方向に歩いて行くのが見えた。