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異世界で僕は美少女に出会えない!? ~《ウェステニラ・サーガ》――そして見つける、ヒロインを破滅から救うために出来ること~  作者: 東郷しのぶ
第九章 誘拐事件と黒い宝石の謎

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降臨派と女神への疑惑

 更新が、めっちゃ遅れました……(涙)。以下、今回、サブローとドリス以外で登場するキャラです。


・シスター・アンジェリーナ……真正セルロド教会の修道女。80歳だが、足腰はしゃんとしている。

・ブラザー・ガイラック……真正セルロド教会の修道士。中年。頭はツルツルだが、ハゲでは無く、剃っている。


・エメール……聖セルロドス皇国の女性騎士。年齢は20代前半。ソフィー(サブローのパーティー仲間)の知り合い。

 2ヒモク(2時間)()らずの徒歩による移動の後、アンジェリーナさんとガイラックさんの教会――真正セルロド教会に到着した。


 失礼な話ではあるけれど……教会を訪れている信者さんの数が、相変わらず少ない。でも、それは今回の僕らにとっては幸運な状況だ。アンジェリーナさん達との話し合いを、すぐに始めたいからね。

 そういう訳で、聖堂の奥に設置されている小部屋で彼女達と面会した。すると驚いたことに、そこには、あのエメールさんの姿もあった。


 エメールさんは――冒険者パーティー《暁の一天》のメンバーであるソフィーさんの知人で、女性の身ながら聖セルロドス皇国の騎士でもあり、昨日は僕らによるハギウズの船への襲撃に参加してくれた。

 そんな彼女が、どうして真正セルロド教会に居るんだ?


 昨日の事件が終わってから、早々にエメールさんは、この教会にやってきたわけだ。おそらくは、起こった事態の報告や、それによる今後の対策を連絡するために。


 アンジェリーナさんとガイラックさんは、聖セルロドス皇国からベスナーク王国へ亡命してきた人達だ。

 皇国の出身者同士として、エメールさんとアンジェリーナさん達が顔見知りであっても不思議では無い。


 とはいえ。


 ……僕も、改めて気を引き締め直さなくちゃならないな。当然だけれど、自分が把握できていないところで、動いている人脈は確実にあるんだ。

 アンジェリーナさん達について、取り立てて余計な感情を抱くつもりは無いが、注意しないと、思わぬ場所や意外なタイミングで、足をすくわれるかもしれない。


 僕とドリスの来訪を、アンジェリーナさんとガイラックさんは快く迎えてくれた。一方、エメールさんは随分と戸惑っている。


 エメールさんが尋ねてくる。

「サブローとドリス? 2人は、どのような用事で、アンジェリーナ様の教会に?」


 う~ん。困ったぞ。これから北方セルロド教団に関して、アンジェリーナさん達に相談しようと思っているんだけど。エメールさんには席を外してもらおうかな?


 そのように僕が考えていることを察したらしい。ドリスが、僕へ告げてくる。


「あたしは、構わないと思う。エメール様にも聞いてもらいましょう」

「ドリス?」

「いえ。むしろ、ここは積極的に、エメール様にも事情を説明しておくべきよ。相手が敵では無い限り、その人と情報を共有しておいて損は無いわ」


敵では(・・・)無い(・・)限り(・・)』――?

 まるで今、一瞬、エメールさんを〝敵〟の範疇(はんちゅう)に入れかけて、そこから弾いたような……。


 ドリス……(きみ)は……。

 彼女の発言の内容に加えて、その声色が胸にズシンとくる。ドリスの声からは、今までの陽気で感情的だった色彩が消え、冷たく理性的な透明さが表に出てきている。あたかも、硬いガラスで出来た鐘が、静かな音で鳴ったように感じる。

 僕以上に、ある種の覚悟をドリスは決めているのかもしれない。


 ドリスに促されるまま、僕はアンジェリーナさん達へ、これまでに起こった出来事の数々を話した。


・ナルドットの街で前から問題になっていた、獣人の子供たちの誘拐事件。その真相が判明した。

・事件には、宝石商のカルートン、そして果実酒の輸出入や販売を手掛けている商人のハギウズが関与していた。

・皆の協力で、カルートンやハギウズを捕らえることは出来た。

・しかし、ハギウズの手によって、誘拐被害者の1人であるミーアは北方セルロド教団へ引き渡されてしまっていた。

・ミーアの身は現在、トレカピ河の向こう、タンジェロ大地にある。

・バイドグルド家の屋敷では、侯爵家の次女であるオリネロッテ様が行方不明になった。

・侯爵家の長女であるフィコマシー様は無事であるが、彼女のメイドのシエナさんも何者かによって拉致(らち)された。そのシエナさんも、ほぼ間違いなく、身体の自由を奪われた状態でタンジェロの地に運ばれている。

・オリネロッテ様とシエナさんの失踪(しっそう)には、ナルドット侯爵家(バイドグルド家)の家臣が関与している可能性がある。

・その者たちの中で重要な名は、魔法使いのムロフトと、オリネロッテ様の護衛隊の元隊長であった騎士ランシスである。


 ……と、洗いざらい打ち明けた。侯爵家からすると〝余計な話を外部の人間に言うな!〟と文句をつけたくなる内容だったに違いない。けれども、僕としては知ったことでは無い。


 約20日、それくらい前に、ミーアは僕と一緒に、この教会を訪れている。その際、ミーアは教会付属の孤児院の子供たちと仲良く遊んだし、アンジェリーナさんやガイラックさんとも親しく会話した。


 そんなミーアの受難を耳にして、アンジェリーナさん達はとても心配してくれた。しかし〝初めて聞いて仰天した〟という感じでもない。どうやら既に、エメールさんからミーアの誘拐に関する事態の概要を伝えられていたようだ。


 やっぱり、エメールさんは、この教会に自身が経験したことを知らせに来ていたのだな。エメールさんとアンジェリーナさん達の間に、深い繋がりがあるのは確実だ。

 でも、その点は、あまり詮索(せんさく)しないほうが良いかな? 今回は、それで、話が通じやすくて助かったんだし。


「現在、ミーアは北方セルロド教団の〝降臨派〟と呼ばれる連中に捕まっています。僕は、絶対にミーアを救い出します。そのためにも、お願いします。アンジェリーナ様とガイラックさん。北方セルロド教団に関して、ご存じのことがあれば、ぜひ教えてください」


 頭を下げようとすると、僕の動作をアンジェリーナさんが止めた。


「サブローくん、頭を下げたりなどしないで。もちろん、(わたくし)たちも、ミーアちゃんを助けるのに協力させていただきます。ご指摘の教団について、知っていることを残らず、お教えします」

「ありがとうございます!」


 シスター・アンジェリーナが話してくれた事柄をまとめると…………どうやら僕が漠然と考えていた以上に、北方セルロド教団は大きな組織であるようだ。しかも、寄せ集めでは無く、秩序だった団体として成立しているらしい


「北方教団の内実に関しては、私よりもブラザー・ガイラックのほうが詳しく知っています」

「ええ。拙僧(せっそう)は以前、北方セルロド教団の関係者と会ったことがありますから」


 そうんなんだ! それは、ありがたい。

 期待の目を向けると、ガイラックさんは頷いた。僕とドリスへ、自身が持っている情報を話してくれる。


「北方セルロド教団は、確かに女神のセルロドシア様を信仰しています。けれど、通常の宗教団体とは少し違います。油断ならない組織であると、拙僧は考えています。北方教団は、戦闘員の数が異常に多いのです」

「戦闘員? 宗教団体であるにもかかわらず?」


 疑問を呈する僕へ、ガイラックさんは丁寧に説明した。


「サブロー殿。拙僧たちが信じている真正セルロド教も含め、皇国のセルロド教は無用の殺生を禁じています。しかし、言葉を変えると〝必要な殺生〟は認めているのですよ。その〝必要〟の範囲を拡大して解釈することは、厳に(つつし)むべきだと拙僧は思いますが。ともかく、聖セルロドス皇国にあるセルロド教の教会には、神官の資格を有している警備員が居ます。指導部に直属する組織として《神の敵に制裁を加える懲罰(ちょうばつ)部隊》も存在します」

「懲罰部隊ですか……。あ、もしかして?」

「サブロー殿が、ご想像しているとおりです。獣人の森へ奴隷狩りに赴いているのは、その懲罰部隊の一隊です」

「……く!」


 人間と比較して、どの種族の獣人も基本的に身体能力は高い。ミーアの父親であるダガルさんなどは、すごく強かった。なのに、獣人の森で〝皇国による奴隷狩り〟が猛威を振るっているのは変だと思っていた。理由は、それか。

 皇国の一般国民が、奴隷商売における利益目的で森に侵入してくるのなら、撃退可能であっても、戦いを専門にしている部隊が襲ってくるとなると、いくら獣人の皆でも……。


 怒りに唇を噛みしめていると、ガイラックさんが僕に謝罪した。


「申し訳ない、サブロー殿。セルロド教の神職の1人として、恥じ入るばかりです」

「いえ。そんな偽りのセルロド教と、アンジェリーナ様やガイラックさんが信じておられる真正セルロド教は全く異なるものであることは、僕も承知していますから」

「そう仰ってもらえると、救われます。……けれども、北方教団の戦闘員は、それら皇国内のセルロド教会の警備員や懲罰部隊とは、また違う。彼らは純粋な戦いのプロです。むしろ、貴族に仕える騎士団に、その性質は近い」

「それは……北方教団がタンジェロの地で布教していることと関係があるのでしょうか?」

「はい。タンジェロは未開の大地であり、多数の強力なモンスターが生息しています。自らの身を守り、組織の活動を未来へ向けて維持しつづけるためには、大きな武力を有していなければならないのでしょう。加えて北方教団は、かなり強引な布教をタンジェロの地で行っていると聞きます。開拓民たちとの摩擦(まさつ)も絶えないのだとか」


 昨日、僕はエレーヌさんから『北方セルロド教団は、信仰心の(あつ)い人々の集団である』との話を聞いた。でも実際は、相当に物騒な連中であるみたい。信仰意識の強さが、悪い方向へ働いた結果なのか?

 そんなヤツらの拘束下にあるミーアの身が、ますます心配になってくる。


 エメールさんが「北方教団が、そのようなトラブルを抱えていたとは……」と、(うめ)くように小声を漏らした。

 それに対して、ガイラックさんは「皇国内では、あまり知られてはいませんが事実です」と返事した。


 同じ皇国の人間であっても、エメールさんは騎士で、ガイラックさんは修道士だ。職業(がら)、ガイラックさんのほうが、北方セルロド教団の事情に通じているのも納得だ。

 更にツッコんで、ガイラックさんに()いてみよう。


「ガイラックさん。北方セルロド教団の中の『降臨派』と称する一味に関して、何かご存じありませんか?」


 僕の問いを受け、ガイラックさんの眉間(みけん)にシワが寄った。深刻そうな表情になる。


「拙僧は聖セルロドス皇国にある時、アンジェリーナ様の力になろうと、さまざまな勢力の情報収集に努めていました。その行いの一環として、サブロー殿の仰る『降臨派』に接触したこともあります。相手は、数名の信徒たちでしたが」


 お! 凄いぞ。さすが、ガイラックさんだ。

 これは、貴重な話を聞けそうだ……と、期待する僕に対し、ガイラックさんの口は何故か重くなった。


「その時の拙僧の率直な感想ですが…………あの者たち…………降臨派の面々は、異様でした」

「異様?」

「そうです。そもそも『セルロドシア様に地上へ来ていただこう』とする発想自体が不敬であり論外なのですが。その間違った奇跡を望む彼らの姿勢は、明らかに精神のバランスを欠いていました。拙僧には、彼らの信仰が〝祈りの心〟というよりも〝毒された執着〟であるように感じられたのですよ」

「毒された執着……ですか……」

「強烈すぎるがゆえに悪化し、歪んでしまった〝執着〟です。〝妄念(もうねん)〟とでも呼ぶべきでしょうか」


 北方教団の降臨派は、狂信者の集まり……ということか?


 ゾッとする。

 そんなヤツらが、女神セルロドシアを地上へ降ろすためにミーアを(さら)った。いったい、ミーアに何をするつもりだ?


 判断に迷うこと、心配すべきことが多すぎて、気持ちばかりが焦る。くそ! 落ち着け。

 ガイラックさんの眼差しが、(うれ)いに満ちる。


「降臨派の者と言葉のやり取りをする中で、拙僧は非常な違和感を覚えました。彼らは(しき)りにセルロドシア様の御名を口にしていた。しかしながら、拙僧は思いました。『彼らが信じているのは、本当にセルロドシア様なのだろうか?』……と」


 え?


「それは、どのような意味なのでしょう?」

「あくまで、拙僧の直感です。皇国内の大多数の人々に信仰されているセルロドシア様は、その信仰の仕方に獣人の皆様たちへの蔑視(べっし)・迫害がともなうなど、同意しがたい部分もありますが、それでもアンジェリーナ様や拙僧が崇敬しているセルロドシア様と同一の神であるとの確信があります。けれど、北方教団、とりわけ降臨派が信じているセルロドシア様は、どこか……いえ、はっきりと奇怪(おか)しい。あの者たちの信仰の対象となっている女神は、本当にセルロドシア様なのか? もしかしたら全く別の神なのではないか? ――そう考えてしまうのです」


 ガイラックさんの話が予想外すぎて、咄嗟に()み込めない

 頭の中を整理し、意味が理解できてくると、その不気味さに冷や汗が出た。


「北方教団の降臨派が地上へ顕現(けんげん)させようとしているのは、セルロドシア様では無い?」

「降臨派の者たちは『セルロドシア様のお声を聞いた。直接、われらに語りかけてくださった!』と喜悦(きえつ)の表情で話していました。しかし、神とは本来〝黙して語らず、地上を見守る〟――それ故にこそ、尊い存在です。もしも、彼らの妄想でも錯覚でも無く、真実、神が人に語りかけてきたのだとしたら、その神は真っ当な神では無い。もしくは、神でさえ無い」

「でも、神様の側に何らかの特別な事情があって、やむにやまれず、信心が深い者に声を届ける場合もあるのでは?」


 僕は夢の中ではあるが、爺さん神――〝パンテニュイ〟という名の神様に会ったことがある。

 まぁ、あの詐欺神(さぎしん)は、どう考えても真っ当な神様では無いけれど。なんか僕へ、イロイロと言ってきたが、ちっとも信じられなかった。


 爺さん神の髭は白かったが、その性根は潔白じゃ無かった。お腹の中は、真っ黒なのに違いない。


「サブロー殿の仰ることも、決して無いとは言えません。しかし、降臨派が信じる〝セルロドシア様の名を称するモノ〟は、彼らの信仰を拒絶する人々への残虐行為を推奨(すいしょう)するなどしていました。そのモノの勧めによって、降臨派は敵対者への蛮行のみならず、仲間内での〝血の儀式〟も始めたのだとか。『タンジェロの地を浄化するために、数多(あまた)の生命を奪え。新鮮な血液を捧げよ』――そんな()まわしい言葉を発するモノは、どちらにしろセルロドシア様では、絶対にあり得ません」


 ガイラックさんが嫌悪の表情で、腹立たしげに言い放つ。


 浄化のために、血と命を欲するとは…………おぞましすぎる。

 降臨派は〝セルロドシア様を名乗る、別の神〟あるいは〝神を称する、神では無いモノ〟に騙されている? 利用されている? 狂った信仰に溺れた結果、それに気付いていない?

 

「それと、降臨派の1人が口を(すべ)らせていましたが、タンジェロの地で、彼らは地下迷宮を拠点にして活動しているそうです」

「地下迷宮……つまり、ダンジョン!? セルロドシア様が居られるのは天上世界であるはずなのに、その女神を地上へ招こうとしている者たちが、よりにもよって地面の下に潜っているのですか?」


 それは、いくら何でも不自然すぎないか? 降臨派の連中の頭の中身は、どうなっているんだ? 狂信者の思考に合理性を求めても、無意味なのかもしれないが。

 ともかく、きわめて危険なヤツらであることは分かった。


 人質……犠牲……血液……生命……。イヤな予感を、脳内から振り落とす。

 出来るだけ早く、ミーアとシエナさんを救出しなくては!


「拙僧が知っている情報は、以上となります」

「ありがとうございます、ガイラックさん。とても参考になりました」

「サブロー殿。ドリス殿。ミーアさんが誘拐され、お知り合いのメイドも連れ去られるなど、大変な事態になっているのですから、貴方がたがタンジェロの地へ渡るのを、お止めすることは出来ません。けれど、くれぐれもご注意ください」


 真摯(しんし)な声で、ガイラックさんが忠告してくれる。


「降臨派の行いには、拙僧も強い怒りを覚えます。彼らが〝セルロドシア様への信仰〟を軽々(けいけい)に口にしている現状にも、我慢なりません。正直、貴方がたに、ついていきたい。誘拐された方々を救い、降臨派の誤った信仰を止めたい。そのように思ってしまいます」


 ガイラックさんは無念そうだった。上辺をつくろった言葉では無く、そこには本気の感情が()もっている。


 ガイラックさんは聖セルロドス皇国で、セルロド教の主流派から弾圧されたものの、それに屈せず、貴族出身のシスター・アンジェリーナを助けてベスナーク王国へ亡命してきた人だ。普段は穏やかな修道士だが、本来は熱血漢なのだろう。意外に冒険者に近い気質を持っているのかもしれない。


「ガイラックさん。そのお言葉だけで充分にありがたく――」


 僕が礼の言葉を述べかけた時、アンジェリーナさんがガイラックさんへ告げた。


「ブラザー・ガイラック。貴方はサブローさん達と一緒にトレカピ河を越え、タンジェロ大地へ向かいなさい」

「なんと! シスター。何を仰るのですか!?」


 驚くガイラックさんへ、アンジェリーナさんが(りん)とした声で語る。


「ブラザー。私たちは今、北方教団・降臨派の悪行を改めて聞きました。掠われたミーアちゃんとメイドの方は、救わねばなりません。そして降臨派により酷い目に遭わされている無辜(むこ)の人は、おそらく、ミーアちゃん達に限らないはずです。その方々の苦境も、放ってはおけません」

「それは……」

「また、たとえ、どれほどの逸脱(いつだつ)があろうとも、降臨派も私たちと同じく、セルロド教の信徒です。彼らが間違った道に入り込んでいるのなら、傍観するのでは無く、正そうと努めるべきです。セルロドシア様の真の教えを奉じる私たちにとって、それは義務なのでは無いでしょうか?」


「シスター」

 感銘を受けたように、ガイラックさんが呟く。が、まだ決断に至らず、迷っているようだ。


「行きなさい、ブラザー・ガイラック。貴方の知識と力は、必ずサブローさん達の助けになります。そして役目を果たし、サブローさんやミーアちゃん達と共に、無事に戻ってきてください」

「シスターのお言葉は、もっともです。頷きたい気持ちで、いっぱいです。……しかし、不安もあります。拙僧がこの教会に居ない間、誰がアンジェリーナ様をお守りするのですか? 孤児院の子供らの世話も、アンジェリーナ様お一人では――」


 そう懸念を訴えるガイラックさんへ、アンジェリーナさんは微笑んだ。


「大丈夫ですよ、ブラザー。ブラザー不在の間は、冒険者ギルドに援助を申し込むつもりです。良い人材を派遣してくれるでしょう」


 そういえば、冒険者ギルドは孤児院に金銭の寄付をしていたな。ギルドの新人研修の際に、寄付金を届けるのを僕は任された。

 冒険者ギルドは、アンジェリーナさんの教会を日常的に助けているのかな? お金だけでは無く、人員の関係においても。


 僕とミーアの新人研修の場所に、この教会が選ばれたのは……単なる顔見せ以上の意味があったのか?


 新人研修の時の指導教官であった、エルフのスケネービットさん。彼女のことを疑いはしない。けれど、どういう思惑を持って、ビットさんが僕やミーアを指導していたかについては、再考する必要があるかもしれない。


 それまで黙っていたエメールさんも、話に加わった。


「ガイラック殿がご心配される内容に、私も同感です。アンジェリーナ様が安全であることは、大変に重要です。私のほうからも、信頼できる者を選んで、教会に顔を出させるようにしましょう」


 アンジェリーナさんとエメールさん、2人に説得され、ついにガイラックさんは承知した。


「分かりました。北方教団のもとを訪れ、被害者を救うのに尽力する――そのように行動できることは、かえって本望でもあります。サブロー殿、拙僧もタンジェロの地へ同行させてもらいます。お許しいただけますよね?」

「もちろんです! ガイラックさんにもアンジェリーナ様にも、心から感謝します! ……ドリスも、良い?」


 ミーアとシエナさんを救える確率が少しでも上がるなら、誰の助力だって大歓迎だ! まして、その人柄と見識を信用できるガイラックさんが、参加表明をしてくれたんだ。拒む理由なんて、無い。


 僕は喜び、それから慌ててドリスに同意を求めた。一切の躊躇(ちゅうちょ)も無く、すぐに受け入れちゃったけど、ドリスの意見も聞かなきゃダメだよね?


 ドリスは僕を見て、次にガイラックさんのほうへ顔を向けた。

「当然、あたしも異存は無いわ。ガイラックさん、歓迎します」


「サブロー殿、ドリス殿。拙僧は少しばかりですが、戦いの経験もあります。もしも、モンスターや……場合によっては人との戦闘になっても、けっして足手まといにはなりません」

 と、ガイラックさんが述べる。


 なるほど。確かにガイラックさんは、シッカリとした大きな体格をしている。ちょっと服装を変えたら、日本史の中世に出てくる〝僧兵〟っぽくなりそうでもある。これは、いよいよ心強いな。


 ……ガイラックさんは聖職者だ。なので〝()やしの奇跡〟のような神聖(ホーリー)パワーを発揮できないかな? とも思うのだが、残念ながら、それは無いみたい。『冒険者チームに属する聖職者の役目は、ヒーラー(回復職)』というけれど……地球時代に読んでいたファンタジー小説の定番な設定に意識を引っぱられるのは、僕の悪癖(あくへき)である。改めなくちゃ。


 ガイラックさんは魔法使いでは無いため、光系統の回復魔法を発動することも、もちろん出来ない。

 キレイに()られたガイラックさんの頭は、ピカピカと(つや)やかに光っているが、それは別問題なのだ。


 何はともあれ『(かみ)は無くても、(かみ)は居る』――ガイラックさんの信仰心は素晴らしい。

 今回の旅では、女神セルロドシアの真偽の確認が大事になる可能性がある。ガイラックさんの宗教的な洞察力に頼る場面も、きっと、あるに違いない。


 僕とガイラックさんは、握手を交わす。

 その時、唐突にドリスがエメールさんへ話しかけた。


「聖セルロドス皇国の騎士であるエメール様へ、あたしから、お願いがあります」


 え? ドリス?

爺さん神「腹黒は(ヒロインを)囲い込み系イケメン・ヒーローにおける属性のひとつなのじゃ。ワシだって張り切れば、ひと花咲かせてヒーローに!」

サブロー「パンテニュイ様は、ボケ・ツッコミ系のヒゲメン(髭メン)だよね……。なれたとしても、花咲か爺がせいぜいじゃないかな?」


 次話で、9章を終わる予定です。

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