この気持ちを知りたいのです その1
次回は明日の18時までに投稿します。
気づけば氷祭りの儀式が近々に迫って、わたしは舞のお稽古に時間を取られるようになってしまいました。
リックに紹介されたシエル・フルールの本は未だに読めないままに、わたしはお稽古に全力で取り組んでいます。
今日も引き続きリリーの指南を受けて、儀式のためにお稽古をしています。
「お嬢様、そこはそうではなくこうです」
リリーがお手本を見せてくれます。
わたしに教えるために相当な鍛錬を積んでくれたことがはっきりと分かる、この上なく流麗な舞です。
毎年、舞の内容は変わってゆきますので、体が覚えている去年の舞の型と無意識に混同しないように緊張を維持し続けるのがするのがとても大変です。
「今年はそこまで大きな変化があったわけではありませんからそのままに踊ってしまうと思いますが、この部分は例年以上に大きな変化が加わっています」
「とても難しいわ。ここまでの流れは去年と全く同じだからつい引っ張られちゃいます」
例年はここの前後からごっそりと少しずつ変化しているのですが、今年はその変化が私が何度も失敗する一点に集中しています。
ただ、この舞は一点集中で成功できるほど軟な舞ではありませんから全てに集中した上で変化を見せることが大切です。
この舞は風の女神と氷水の神に捧げる舞でありますから、移ろいゆくさまを表現しなければなりませんから。
「私も賛成します。今年は事情があるとはいえ、変化に欠けますからね」
「事情、ですか?」
「あぁ、お嬢様が気にするほどのものではありませんよ」
リリーは誤魔化しました。何かあったのでしょうか?
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ここで言う事情とはフィリーネとセドリックの婚約とそれに伴う領内の混乱、そして王国への反感であるが、それを表立って示してしまわないように敢えて風波が立たない変化の少ない舞が選ばれた。
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「とにかく、このまま通しで練習していても埒が明きませんから、あまりよろしくはないですが変化の前後だけを何度も繰り返しましょう」
神聖な舞を恣意的に分割することは褒められたことではないのですが、失敗してしまうよりもましです。
「分かりました」
「それではもう一度お教えします」
わたしは当該箇所だけを舞うリリーの型をまじまじと凝視して頭の中に叩き込みます。
「お嬢様、覚えられましたか?」
五回程舞ってからリリーは一度型の披露を止めて、わたしに問いました。
「動き方は覚えました」
「それでは披露してみてください」
「分かりました」
わたしはその部分だけを舞いました。一度目はやはり混ざってしまいましたが、二回目からは型は間違えることなく最後まですることができました。
そしてそのまま通しを行うと、変化した型を叩き込んだから良かったのか、間違いなく最後まで成功しました。
「お嬢様、その調子です。一度休憩をしましょうか?」
「必要ありません」
「······リック様がいらしています」
驚いてリリーがちらりと視線を向けた方を見ると、確かにリックが座ってわたしの舞のお稽古を見学しています。
どうしてか見られていたことが分かると、少し恥ずかしくなってきました。
「どうしますか?」
再度リリーが確認します。
本職の合間を縫ってきてくださるリックを無碍にするつもりもありませんので、わたしはリリーに返事をします。
「少し休みます」
わたしはしばらくの休憩時間をもらって、水分を摂取してからリックの元へと行きました。
短くてすみません。続きとは話が変わりますので、このあとは次回の投稿にします。
今日に投稿するかもしれませんし、明日になるかもしれません。どちらにせよ、前書の時間の前には投稿したいと思います。




