↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

社会復帰への道 パート7 恋

「おはよう、フィカス!アイビーの朝の散歩一緒に行こう。

「ああ……。


振り向いたフィカスとプリンの目が合った。

瞬間、フィカスは恐怖に似た感情を覚えて…

目をそらした。

そして、プリンに背を向けた。


「やはり、お前だけで行ってくれ。我は用事がある。

「えー、行こうよ、フィカスー。


プリンは後ろからフィカスにのしかかってブラブラ身体を揺らした。

瞬間、触れ合った部分からフィカスの身体に電撃が走った。


「我に触れるな!

フィカスはプリンを払いのけると、プリンは三回転して床に転がった。


「す、すまぬ…。大丈夫か?

「イタタ…ひどいよフィカスー。

「う…………。


フィカスは突然窓から飛び降りて山の中に消えていった。





「なんだ、なんだ、どうしたのだ……。


フィカスはコンサートの夜以来、プリンの目をまともに見れなくなった。


「何故、プリンを見ると心臓あたりが痛み、恐ろしく感じるのだ。

生まれて初めてだ。このような症状は。

はあ……まったく。


フィカスは胸を押さえてため息をついた。


「兄貴…。


木陰からガウラが音もなく現れた。


「今…今、来るな。寄るな。


ガウラは眉をひそめて、木を背もたれにした。

短い黒髪をくしゃくしゃかいている。


「兄貴、あの美味しいやつ、仲間にしちゃえば?

「ふざけるな!

「兄貴ができないなら俺がやってやろうか?


フィカスが牙をむき出しにしてガウラに襲いかかった。


「あ、兄貴、やらねえ、から、…。

「お前は信用できない。人の血を吸う奴など。

「肉食獣が人の血を吸って何が悪い。兄貴が変わり者なんだろ。

「そうやっていくつの村を潰した。

「兄貴、俺は俺なんだよ。兄貴みたいには生きられない。

「……………。

「だから、俺はここを去る。もう兄貴の前には現れない。

「どこへ行く。

「まだわからない。兄貴こそこれから何をするんだ?

「我はこの城にいる。永遠に。

「じゃあ、あの美味いやつ、どうするんだよ。

「どういう意味だ?

「好きなんだろ。

「なに?今、なんと言った。

「だから、気に入ってるんだろ?あの人間。

「兄貴まさか、初恋とかいうなよ。

「初恋………。こ、恋だと。な、何………。


フィカスは頭を抱えてうずくまった。

ガウラは大声で笑うとじゃあなと言って、消えた。


(この我が、乙女のように恋………だと?


真夜中、ぐっすり眠るプリンをフィカスはじっと見つめている。


(こうして眠っているプリンは怖くない。


幸せそうに眠っているプリンの頬を撫でる。


(柔らかく温かいな…。髪も柔らかでわたのようだ。


首筋に顔を近づける。


(なんて甘い香りだ。


そして、柔らかな唇に親指で優しく触れた。


「ん………。


プリンが声を出して、指を離した。

フィカスは熱に浮かされたような瞳で見つめる。

気づくと朝になっていた。


(もう何日こんな事をしているだろう。

頭がおかしくなりそうだ。戻りたい…、前の自分に。)


その時、プリンのとなりに小さくうずくまっているアイビーが目に入った。


(そうだ!ゴブリンだと思えばいいではないか!

いや、この巻き毛!羊だ!羊だと思えばいい!

可愛い羊だ!


プリンを見つめて、羊の顔をイメージした。不思議と可愛い羊に見えてきた。


(できる!こいつは可愛い我のペットだ!


プリンが目を覚ましそうだったので、窓から姿を消した。


(できる、できる)


「フィカスー!おはようー。

「ああ、おはよう。


フィカスはプリンを見て微笑んだ。


(大丈夫だ。成功だ。


「あれ、今日は機嫌いいね!

「良いことがあった。

「良かった!僕、嫌われたかなって思ってさ。さすがの僕もへこんでたんだ。

「嫌ってなど…。


フィカスはプリンの頭をくしゃくしゃ撫でて抱きしめた。


「うわ、いきなり、情熱的ー!

「可愛い羊…。

「え?

「なんでもない。


フィカスは嬉しくてプリンを背中におぶった。


「散歩に行こう


ものすごいスピードでバルコニーから飛び降りて、城の先にある山を登り始めた。

ほんの5分も経たないうちに頂上に着いた。

頂上は雪が積もっていて、銀世界だ。


「さむーー!ははは、もう、フィカス!


プリンは大喜びで笑った。

やがて地平線の彼方から朝日が登り始めた。光が世界を照らし出す。

プリンは背から降りると目を開いて固まった。

瞳からひとすじ涙が落ちた。

そしてフィカスの手を握って微笑んだ。


「なんて世界は綺麗なんだ。良かった、ここに来て。

フィカスに会えて。


そんなプリンをフィカスは愛おしそうに見つめた。



つづく














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。