社会復帰への道 パート8 告白
また春がやってきた。
プリンがこの城にきてもうすぐ一年が経つ。
城でも街でも大人気だ。
「ねえねえ、フィカス、またピクニック行こうよ!みんなで
「ああ、そうだな。今日はお前が食べるサンドイッチの買い出しでも行くか。
「うん!
フィカスは愛おしそうに見つめた。
プリンも微笑む。
「プリン、ちょっとよろしいかしら。
美女、ガイラルディアが現れて城の庭にプリンを連れ出した。
フィカスは気になって気配を消しつつそっと覗いた。
「プリン、セダムがあなたに告白したって聞いたわ。
(なんだと!
「う、うん。
「だから、わたくし、ずっと、我慢してきたけれど、本当のことを言うわ!
あなたを愛してるわ。私と一緒に生きて。
ガイラルディアはプリンより少し背が低い。
プリンの首に手を回すと背伸びをして口付けた。
何度も口付けるが、プリンからキスは帰ってこない。
ガイラルディアはゆっくり腕を離した。
「私じゃダメなの?魅力がない?
「そん…。そんなことない。ガイラルディアに迫られたら僕だって男だからもう、クラクラだよ。
プリンは真っ赤になっている。口にはガイラルディアの口紅がべったり。
「でも、僕、ああ、セダムにも言ったんだけど、前から好きな人がいるんだ。
本当にごめん。でもさ、これからも友達でいて。お願い。
プリンは申し訳なさそうに笑った。
「ふう、しょうがないわね。良かったわね、私が大人の女で。
これが初恋なら貴方を殺してるわ。
「あ、あはは。
のぞいていたフィカスは口に手のひらを当てて、突っ立っている。刺激が強すぎたようだ。
街への買い出しは荷物が多くなるため、ローレンチの馬車で行くことにした。
サンドイッチの材料をマルシェで買い込み、フィカスは自分の絵の具もついでに買うことにした。
絵の具を買って、馬車に戻ると、ローレンチとプリンが何やら真剣な顔をしている。
「プリン、俺と付き合ってくれ。俺の恋人になってくれ。
(なにぃ!
「ローレンチ!今日は一体、みんな…。
ローレンチはプリンを強く抱きしめた。
「俺にはもう君の事しか考えられない。君を俺のものにしたい。
「ちょっ…。ローレンチ。
プリンはローレンチの身体を押した。
「プリン……。
「ぼ、僕ね、好きな人がいるんだ。本当にごめん。付き合えない。
でも、ローレンチの事大好きだからずっと友達でいて、ね。
「やはりダメか。うん、でも振られてスッキリしました。友達でいましょう。
ローレンチは寂しそうに微笑む。
フィカスは変な咳払いをしながら、絵の具がどーのこーのブツブツ言いながら
二人のところに戻るしかなかった。
城に戻ると今度はコルディリネが待ち構えていた。
ローレンチはコルディリネに肩をすぼめてみせた。
彼女はニヤリと嬉しそうに笑った。
「プリン、話があるの。ちょっと歩かない?
「ん、いいよ。
コルディリネはプリンの手を繋いでバラ園の方に歩いて行く。
フィカスはローレンチに悟られないように、自分の部屋に戻るふりをして、
後を追った。
「ねえ、プリン。実はね、これでも私、800歳なの。
フィカス様を除いて、この城では私が一番年上。
「えええ!そうなの!?
「それにフィカス様の子供じゃないわ。
道端で死にそうな私をヴァンパイアにしたのはガウラよ。
あいつの気まぐれよ。
「ああ、コルディリネ。辛かったんだね。
プリンはコルディリネを抱きしめた。
「これまで私は一人で生きてきた。
城の人たちとは恋に落ちることなんてなかった。
だけど、あなたは…。あなたに惹かれる。
コルディリネは潤んだ大きな瞳でプリンを見上げた。
「わわわ…待って。ほんと…。
今日はみんなして僕をからかっているんじゃないよな。
「失礼ね。思い切って告白してるのに。
「ご、ごめん。
ふう、僕さ、好きな人がいるんだ。だから…ごめん。
ああーでもさ、僕コルディリネの事すっごい好きだから、今まで通り友達でいてよ。お願いだから。
「ええ、いいわ。いつか私の事好きになるかもしれないしね。
コルディリネはプリンを引っ張って頰にキスした。
「一体これはどういう事だ。
フィカスの部屋にヴァンパイア達全員が集められた。
「お前達はどういうつもりでプリンにあんな事をしている。
「どういうつもり?皆、彼を愛しているんですよ。陛下。
セダムが答えた。
「愛しているだと?
「誰の許しを得てそのような…!
「許し?愛に許しはいりませんよ。愛は止められないものです。誰であっても。
たとえ陛下でも。
「なんだと…。
「それに、俺はまだ諦めたわけではないんです。
ローレンチはフィカスを睨みつけた。
皆が賛同している。
「既成事実でも作れば私のものよ。
ガイラルディアがニヤリと笑った。
「既成事実だ……と?な、ならぬ!そのような事断じて許さぬ!
「さっきから聞いていれば。
コルディリネが前に進み出た。
「陛下こそ、どういうつもりですの?
人の恋路に口を出せるのは同じ人を好きなライバルだけですわ!
それとも何ですか?
陛下もプリンを愛してらっしゃるとでもいうのですか!?
「我は…、我は…、あいつを愛している。
その時扉の外でガタンと音がした。
扉を開けるとプリンが転がって腰をさすっている。
「あ、ごめん…、聞くつもりじゃなかったんだけど…。
フィカスは呆然とした。
プリンはバツが悪そうに立ち上がると、ゆっくり部屋に入る。
「あ、あの…、みんなの気持ち凄く嬉しい。もちろんフィカスも。
でも、僕、正直まだ恋愛とかあんまり考えられなくて、
あの…、それにエルヴィアには小さい頃から大好きな幼なじみの女の子がいて、
留学から帰ったら結婚する事になってるんだ。
……………。
ご、ごめん…、本当に。
だけど、僕、みんなの事本当に大好きなんだ!
だから、これからも大事な友達で………。
「愚か者!
フィカスが怒鳴った。
「ただお前の姿を見るだけで、身体が張り裂けそうだというのに、
これ以上どうやってお前のそばにいろというのだ!
…、耐えられるわけがあるまい。
お前はただのペットの羊だと思い込んでいたが、もう無理だ。
怒りと、悲しみと、愛情で我は狂ってしまうだろう。
お前をめちゃくちゃにして、お前の愛する娘の血を一滴残らず飲み干して、我は本当の化け物になる。
フィカスの瞳が真っ赤に染まった。
「行け、早く。帰るのだ。お前が愛するものの元に。
今なら、追わぬ。
「あ…。
フィカスは一瞥すると、バルコニーにから出て行った。
一同は信じられないものでも見たかのように、しばらく誰も動かなかった。
つづく




