乱れる戦場
敵の小隊を三つ解体した。
時間的にレイが目覚めるのも、もうすぐだろう。
「コスモ、現在の状況は?」
『しばらくお待ちください……』
長らく戦場の情報を更新していなかったため、情報の取得に手間取っているようだ。
『……状況が悪化していますね』
「どないな感じに?」
『戦場に存在する敵勢力数が三百、こちらが百です』
「敵勢力とこっちの勢力差がずいぶん均衡してきた感じやな……となると、どの辺が悪化しとるん?」
『訂正します、戦場外、つまり撤退した数も含めれば、敵が八百、こちらが二百です』
つまりは敵の部隊五百が完全撤退、こちらの戦力は三分の一しか減っていないと言う事だ。
「ほうほう、ますますええことやん? 敵部隊を撤退させてこちらの戦力もあまり削られてない」
『代わりに二体、厄介な敵が……』
怪訝に思い、コスモからデータをAIに転送してもらう。簡単な構図しかないが敵、味方の分布がよくわかる。
「実質戦場を制圧しているのはこの二体ってわけやな……一つがミーネとして……こいつは何者や?」
『情報がないのでなんとも……ただわかっていることで、ミーネがギアのような動きを見せています。人間もアクトも関係なく、視界に入った者全てを皆殺しにしたため、人間部隊の大半が撤退、こちらも一部小隊長の判断で一部撤退し、最終防衛ラインまで後退した者がいるようです』
「そうか、敵でも味方でもない中途半端な位置づけにおるんならもうしばらく様子見や。うちらはもう一体の敵を見に行こう」
先ほど見た全体図によれば、ここから十キロ離れた地点、相手が基地に向かっているのならば一時間以内には敵と接触することになるだろう。
「兄貴はまだ目覚めんのやんな……ほんまに難儀な兄貴やで……寝坊も度が過ぎると起きれんくなってしまうで」
戦闘が始まって一時間ほどが経過した、たったそれだけで、戦況は大きく変わってしまっているのだ。
『そうですね、ですがもしも間に合えば我々の勝率が跳ね上がります。現状では敵の増援もあり得ないでしょうから』
「そうやな、急ぐで、なんや知らんけどややこしいことになってきよったみたいやし」
再び木の枝に飛び乗り、移動を開始する。
未知の敵をその目で確認するために――