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第九十八話『転生して』

 私がまだ、全く力が足りなかった頃。モリ・ハルドで最大の戦争が起きたの。独立戦争。今から300年前の話。信仰の思いの強さがモリ・ハルドの人々を強くしていると感じたポリットの人々は教会を破壊して回ったわ。私も耐えれなくなってしまって。このリンのいる世界に入り込んだの。


雨が冷たい日だったわ。雨は私の髪の毛や服を濡らして、どんどんと気持ちまでも重くしていったの。力の使い過ぎかはわからないけれど、声が出なくなっていたの。誰も見向きもしなかったわ。人々は雨のように冷たい視線を向けるだけだった。


そこにその背格好に似合わない大きな黒色の傘を持って、赤色に黄色が被さった大きな革の鞄を背負った女の子が通りかかって、私を傘に入れて言ったの。


「お姉さん。大丈夫?」


それがあなただったわね。リン。あなたは続けてこう言ったわ。


「風邪ひいちゃうよ。家、来る?」


そう言って、何も言わず、呆然としていた私の手を引っ張って、私を家まで案内したわね。革の鞄から鍵を出して、ドアを開けたわ。そして、


「ちょっと待ってて。」


と言ってタオルを取ってくれたわ。そして、私を少し強引にお風呂に入れて、


「あとちょっとで、溜まるから、先にシャワー浴びてね。」


って言っていたわね。なんて優しい子なんだろうと思ったわ。私がシャワーから浴びると、お湯を沸かして、温かいスープを入れて待っていたわ。


「お姉さん。大丈夫?」


私がうなづくと


「よかったあ。」


と言って笑っていたのが、可愛かったわ。スープを飲んでようやく声が出せるようになったの。


「ありがとう。可愛らしい女の子。」


そう私が言うと、あなたは顔をドロップのように真っ赤にしていたの。その家は静かだったわ。


「お母さんとお父さんはいないのかしら?」


「えっと……お父さんとお母さんは今日、お出かけ。妹は、おばあちゃんが預かってるから、大丈夫。」


「寂しくないの?」


「?寂しくないよ?」


「なぜ?」


あなたは不思議そうな顔をしていたわね。私は、ずっと子供は親と一緒にいた方がいいって思っていたから。あなたの発言にはとっても驚いたの。


「えっと、お父さんとお母さんがいると、気使うの。それでね、疲れちゃうの。だから、一人の方が好き。私ね。一人でお湯も沸かせるし、ドリアも温められるよ?ほら。」


その時、大きな音がして、あなたがキッチンの裏側に回って、一生懸命、大きな箱からドリアを取り出して、私に見せたの。


「お母さんとお父さんと一緒にいると疲れちゃうの?」


「そうだよ?」


「一緒に私のところに来ない?」


「?」


「……いえ、なんでもないわ。」


私はモリ・ハルドのことを思い出したの。みんな優しくて、人のことを温かく受け入れてくれる私の子供たち。でも、戦争のことを思い出して、思いとどまったわ。でも、あなたは目を見開いて、


「行きたい!どこなの?どんなところ?」


と身を乗り出して聞いていたわ。


「また、後でね。」


私はそう返すしかなかった。そして、約束したわ。


「約束よ。あなたがこの世界から消えたい、って思った時、必ず迎えに行くわ。」


って。それがあなたが初めて、モリ・ハルドに来た理由だった。


私にティレは向かい合って言った。


「……あなたには、選んでほしいの。モリ・ハルドに戻るか、あなたの世界に戻るか。ここは世界の狭間。どちらも選ぶことはできるわ。」


私はもう決まっていた。


「モリ・ハルドに。ロジェさんのいるところに戻りたいです!……私の生きる意味はロジェさんの隣で、ずっと、ロジェさんの決意を助けたい!私の太陽だから。私はずっと、ロジェさんのこと、ずっと、すごいって思ってた。私の生きる意味は、モリ・ハルドにあるから!」


すると、ティレは笑って言った。


「分かったわ。あなたの体は綺麗に残っているの。」


私はそう聞いて、驚いた。あの爆風では、体は綺麗に残っているはずがない。むしろ、破壊されているのもだと思っていた。


「あなたの体に、あなたの魂を”転生”という形で、生きさせることができるわ。」


「転生?」


自分の体に転生するのは変な感じがする。ティレは私の反応を見て、クスクスと笑って言った。


「これを食べてほしいの。」


そう言って差し出したのは、dropだった。さくらんぼに似ているが、ロジェさんが種が猛毒であると言っていた。


「種ごと食べて。」


そう言って私の手に握らせてくる。私は覚悟を決めて、そのdropを丸呑みした。その瞬間視界が歪む。


「また、次の人生を楽しんで。」


そう聞こえたのを最後に私は、目を瞑った。

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