充満した穢れ
ハンターがハッと思いついてユリアに言った。
「ユリアさんが定期的に団員を見てくださるといいんですが…」
「そうですね…でも、私は王宮魔法使いではないですし。トーマス様や私の魔法の先生とも相談させていただきます。」
「そうですよね。いや、ご無理を言ってすみません!原因不明の体調不良の団員は、その都度こちらに連れて来ても大丈夫ですか?」
「もちろんです。私に出来る事であれば!」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
ハンターと団員達は、口々にお礼を言い帰って行った。
その日、夕方頃になって1人の団員が運び込まれて来た。
「ユリアさん!」
「トーマス様!どうしたんですか?」
「すみません!診ていただきたい団員がいまして。」
「いいですよ?」
トーマスはドアの外に合図すると、1人の団員が抱えられて運ばれて来た。
見るとその団員は顔面蒼白で、脂汗をかいている。
「実は今日、王都の周りの警備についていた者なんですが警備中に何かに襲われまして。」
「怪我はされていませんか?」
「はい。怪我はないんですが、ずっとうなされているんです。意識が戻りません。」
「では、診てみますね。」
ユリアは目を瞑る。
すると、真っ黒いモヤモヤが辺りに充満していた。
「これは…。」
「何か見えましたか?」
トーマスが心配そうに聞いてくる。
「はい。これはおそらく穢れにやられています。」
「え?穢れ?」
「はい、間違いないと思います。トーマス様、すみません!コートおばあちゃんを呼んできてもらえないでしょうか?私、ここまでの穢れをきちんと治せるか分からないので。」
「分かりました!」
トーマスはそう言うと、勢いよく飛び出して行った。
到着して意識のない団員を見た瞬間、コートの表情が曇った。
「これはかなり穢れに侵食されてるね。このままだとまずい。ユリアちゃん、しっかり集中してやってみようか。」
「は、はい。」
ユリアはいつものように白の力を注いでみる。
すると、団員が唸り声をあげた。
充満した黒いモヤモヤは、大きくなったり小さくなったりしてユリアの力に反応しているようだった。
なかなか消えないモヤモヤに手こずるユリア。
コートがそっと囁く。
「押さえ込むのではなく、撫でるように力を注ぎなさい。」
ユリアは身体の中の白い光を一層強めてから、黒いモヤモヤに力を注ぐ。
だんだんモヤモヤが小さくなって来たように見えた。
そして、ユリアが最後に残ったモヤモヤに力を注ぐとユリアの身体がふわぁっと白い光に包まれた。
その白い光が、意識のない団員に移り体を包む。
光が消えると、先程まで苦しそうに唸っていた団員は静かな寝息をたてて眠っていた。
「ふぅ……。」
ユリアは目を開けて息を吐く。
「ユリアちゃん、よくやった。成功だよ。」
「はい、ありがとうございます!」
ユリアはうっすら滲んでいた汗を拭う。
寝ている団員には騎士団の宿舎でしばらく休養を取るように指示するコートが、トーマスに手招きした。
「悪いが、トーマスさんは残ってくれるかい?」
「分かりました。では、先に帰っていてくれ。」
「はい!承知しました!ありがとうございました!」
他の団員達が帰ると、コートは神妙な顔をした。
「あの団員さんは、王都の外の見張りだったのかい?」
「はい。王都の東側の見張りについていた者です。」
「そうかい。」
「何か気になる事でもあるんですか?」
ユリアはコートに聞いた。
コートは少し考えて口を開く。
「いや、私の勘違いならいいんだが……。あの団員さんの目が覚めたら話をして聞きたいから教えてくれるかい?」
コートは腕組みをして更に考え込んでしまった。




