ガダルーシャ遠征
ガダルーシャ国とは、長い間友好関係を築いてきた。
しかし、ここ数年ガダルーシャの国王が代替わりした頃から雲行きが怪しくなって来た。
ガダルーシャの新しい国王になったのは、前王の時に摂政として仕えていた人間だった。
いわゆる、クーデターである。
王家の人間は全員処刑された。
罪もない幼い子供まで全員だった。
しばらくしたある日、ガダルーシャ国から使者がやって来た。
その使者が伝えたのは、貴国の王女をガダルーシャ国に輿入れされろというものだった。
「我が娘を輿入れさせろとは、一体どう言う事か!」
国王は激怒した。
元々、ガダルーシャ国との間には上下の位置関係はなく輿入れさせろと言われる筋合いもない。
ガダルーシャ国の使者にお断りの返答をした国王。
しかし、事もあろうにその使者はガダルーシャ国に帰国する時王女を誘拐して行ったのであった。
ガダルーシャ国は優秀な魔法使いが多い事でも有名で、王女はガダルーシャの魔法使いにより
転送魔法ですぐさまガダルーシャに送られてしまっていた。
王宮魔法使いと王宮騎士団で結成された遠征隊がすぐにガダルーシャ国に向けて出発した。
コートは思い出しながら、話し続ける。
「ガダルーシャの新しい国王は、変な儀式に凝っていてね。そこで出たお告げが王女を生け贄にすると言うものだったらしい。」
「え!生け贄!輿入れではなかったんですか!」
「ああ、そうなんだ。輿入れさせればその後、病死したと言って誤魔化せるからね。」
「怖いですね……」
ユリアは眉間にシワを寄せて言った。
エミネールが話し出す。
「私達がガダルーシャのお城に攻め入った時は、儀式の準備をしている時だったのよ。もう少し遅かったら生け贄になっていただろうね……」
「その新しい国王はどうなったんですか?」
ユリアがコートに聞く。
「怪しげな魔法陣で消えたのさ。私たちの目の前から。今もどこにいるかは分かっていない。」
「おそらく、穢れに飲み込まれたんだと思うよ?」
ファッジがユリアに言った。
「穢れ?」
「ああ、そう。その新しい国王は摂政の頃から国の各地で虐殺していたらしいのさ。穢れは人の怨みや悲しみが集まって生まれると言われているから…きっと殺した人たちの怨念に取り憑かれていたんだろうね。」
「それで、無事に王女様は帰って来れたのですか?」
「もちろん、王女様は救出したよ。でもね、その牢には黒魔法が使われていてね。」
「黒魔法?」
「ああ、禁断の魔法さ。ガダルーシャ国には優秀な魔法使いが大勢いたからね。その中の誰かが黒魔法を使って王女様を捕らえていたんだよ。」
「その黒魔法の牢から王女様を助け出したのが、エバンだ。」
「すごい!エバン様が?」
「そう。でもね、助けた所までは良かったが黒魔法の力に飲み込まれそうになってね。王女様を牢から出した後、代わりに牢に捕われてしまったんだ。」
「あの時、私が見つけなかったらエバンは死んでいたねぇ。」
ファッジもエミネールもその言葉に頷いた。




