ホットサンド
次の日、朝早く村を出発した3人。
山道を進むにつれて冷たい風が吹いてきた。
村であたたかい防寒のポンチョを購入し早速着込んでいた。
「この防寒ポンチョはあたたかいですね!」
「ああ、このポンチョの中の毛はこの辺の村で育てている長毛の羊の毛を使っているからね。ほら、見てご覧。この山にも野生の羊が沢山いるんだよ。」
ユリアはコートが指を指している方を見ると
山の斜面で体を寄せ合って暖をとる野生の羊達が見えた。
「ああやって寒い冬を越すのさ。だから、この羊の毛はあたたかいんだよ。」
軽くてあたたかいなんて凄いなぁ…とユリアはポンチョをマジマジ見た。
「マグゴナル様、ユリアさん。少し馬が疲れたのでこの辺で一旦休憩を取りましょう。」
トーマスは馬車を降りて、風がしのげそうな場所を探す。
少し先に山のくぼみがあったので、そこで休憩する事にした。
馬に水と餌をやり、あたりに落ちていた枝を集めて火を起こすトーマス。
騎士団の遠征に行くと、宿に泊まる事よりも野宿が多いというだけあって焚火を起こすのもお手の物だ。
トーマスの起こした火にあたる、コートとユリア。
コートは荷物の中から、包みを取り出した。
「それはなんですか?」
包みの中身が気になりユリアが聞くと。
「これは、ホットサンドだよ。」
「ホットサンド?」
ユリアは聞いたことのない言葉に首を傾げる。
この国にはパンはあるだいたいが丸形だったり楕円形だったりする。
「私が昔、王宮にいた頃に食べた物なんだ。パンを平たく薄く切ってその上に野菜やチーズを乗せて。また上にパンを乗せた物をサンドイッチって言うんだよ。」
「サンドイッチ……」
「そう!それでそれを鉄の型に入れて焼いたのがホットサンドだよ。」
「初めて聞きました。サンドイッチ…ホットサンド…」
ユリアはホットサンドを持ってマジマジ観察している。
「さてと。今日は型がないから予め焼いてきたんだ。この火で少し温めてからみんなで食べよう。」
コートは手際良く火の前にホットサンドを並べた。
端の方からチリチリ焦げ始めたホットサンド。
「さぁ、そろそろいいだろう。トーマスさんもここに来て一緒に食べよう。」
ユリアはホットサンドを手に取り、少し眺めてからひと口食べた。
「ん!!これ!美味しい!」
中には野菜と一緒にチーズが入っていて、そのチーズが少し溶けているのが味わい深い。
「焼きたてはね、チーズがとろけててもっと美味しいんだよ。」
これより美味しいなんて…とユリアはレシピが知りたくなった。
「今度、作り方を教えてあげるからお店で出してみたらどうだい?」
「本当に?是非!お願いします!これ、本当に美味しい!」
トーマスも隣でホットサンドを夢中で食べている。
コートは一生懸命食べている2人に言った。
「この間、騎士団の食事について話しただろう?これなら、サンドイッチを予め作り置きしておいても型さえあれば自分達で温めて食べられるからね。」
「確かにそうですね!」
トーマスは頷く。
「訓練が終わる時間はそれぞれ違うので、その都度作れるのは嬉しいです。」
「でも、型って簡単に手に入るのかな?」
「うーん、この国にはないね。遠い遠い国の食べ物だからね。」
「そうかぁ、残念だなぁ……」
「ないならば、作れば良いのでは?」
トーマスは普通に答えた。
「作るって言っても鉄で作るんですね?」
「そうだね、素材は鉄だよ。帰ったらトーマスさんに型を渡すから、是非作ってみてほしい。」
「製鉄の職人にあたってみます。これが上手く行けば、騎士団の食事も改善されるかもしれませんので。」
トーマスは最後のホットサンドを口に放り込んだ。




