僕のそばに
「この事件で、ケイト・ピットーニは国外追放になりました。」
「そうですか……。」
ユリアはトーマスの話にうなずく。
「ユリアさんを斬ったタイラーという男は、鉱山に流刑が決まっています。それから……。」
「それから?」
「実は今回の件で、ピットーニ家の今までの悪行が表に出まして。ピットーニ家は財産没収と爵位取り上げになりました。」
「そうなんですか……。なんだかモヤモヤしてます。」
ユリアは複雑そうな表情だ。
「ユリアさん。犯人を罰しても貴方が傷ついた事には変わりない。僕は貴方を守れなかった事が悔しいです。」
トーマスは申し訳なさそうに俯く。
「そんな!トーマス様のせいじゃありませんよ。それに、脚の傷もだいぶ良くなってますし。」
ユリアはトーマスに向かって微笑んだ。
「あ、あの……ユリアさん。」
「はい。」
「あの、今日は天気もいいですし。ちょっと出かけませんか?」
「今から?ええ、いいですね!気分転換に出かけたいです!」
2人はゆっくりと散歩に出かけた。
街中は真っ白な雪景色。
「ユリアさん、寒くないですか?」
「はい。大丈夫です。」
トーマスはユリアが転ばないようにさりげなく腕を出す。
最近はこうした動作が自然になって来たので、2人とも照れたりする事もなくなった。
向かった先は、庶民が集う街の外れにある公園。
冬の間は、雪に覆われているので人通りも少ない。
トーマスはその公園内にある、温室に案内した。
この温室は王家が薔薇の研究で作った温室。
貴族であれば誰でも中に入れる場所だ。
「わぁ!ここ初めて入りました!中はあたたかいですねー!」
温室の中には、ひと休みできる東屋もあり
2人はそこで休憩する事にした。
「薔薇がいっぱいですね!いい香りもする。」
ユリアは久しぶりのお出かけなので、薔薇の香りのする空気を思い切り吸い込んだ。
一方、トーマスは先ほどから何やら落ち着かない様子。
ユリアに話しかけようとしては手を引っ込めたり……
それを何回か繰り返した後、トーマスはゴソゴソとポケットから何かを取り出す。
「あ、あの。この件が片付いたら……貴方に差し上げたかったんです。」
そう言って出したのは小さな箱だった。
「僕は……その貴方を……もっと側で守りたいんです。」
そう言いながら箱を開ける。
そこには薄いグリーンの石がが光る指輪があった。
「えっ……トーマス様……」
「あ、これは婚約指輪とかではなくて。その……なんと言うか……結婚の約束って言うか……ユリアさんに似合うかなと思って。あ!婚約したらちゃんと!もっとちゃんとした指輪を贈りますので!……えっと……。」
ユリアは自分の手を差し出す。
「トーマス様。付けてくださいますか?」
「あ、はい!」
トーマスはユリアの薬指に指輪をはめる。
「トーマス様、ありがとうございます!すごく嬉しいです!」
「ユリアさん……。」
トーマスは真剣にユリアを見つめる。
「必ず貴方を守ります。だから、これからはずっと僕のそばにいてください。」
「……はい。」
その日、トーマスとユリアは初めてキスを交わした。
優しくて、くすぐったくて、不思議な気持ちだった。
この時、トーマスがユリアに贈った指輪は
のちに、生涯肌身離さず付けていたユリアの宝物になった。
誤字報告ありがとうございました!
誤字が少なくなるように
これから更に気を付けます٩( *˙0˙*)۶




