スープを作りながら
ユリアはじっとしているのが苦手な性格。
カフェをやっている時もほとんど何か作業をしていた。
怪我をしてからずっと寝てばかりだったユリアは
自宅に帰ってから、やっぱりじっとしていられなかった。
「トーマス様に怒られちゃうかな?」
そんな事を口にしながら、自宅に常備してあった野菜を刻んでいく。
材料のほとんどはお店のキッチンにある。
さすがにそれを取りに行ったら怒られるだろう…。
ユリアは自宅部分にあった材料だけで、野菜スープを作っていた。
残っていた野菜と保存していたベーコンを切り鍋に入れる。
そこにお水と野菜から作ったブイヨンペーストを入れて、暖炉の前に置いた。
「よしっと。」
そこでじっくりとスープを煮込む。
スープを煮込む間、ユリアはまた暇を持て余してしまった。
寝てばかりだったからか体力がなくなってるかな…
ユリアはソファに座りぼーっとしていた。
「そう言えば……白の魔法使いって何をするんだろう?」
白の魔法使いという言葉を知らないユリアは
それが何を意味するのか分からない。
「うーん…癒しなさいって言っていたような。」
ユリアは癒すとは何か?
ずっと考えていた。
癒しの魔法は、回復魔法の事かな?
それならもう使えるし……。
それとも魔力が上がったって事?
一向に答えが見つからないユリアは、答えを見つけるのを諦めた。
今度、トーマス様に王宮図書館に入れないか聞いてみよう!!
王宮図書館には、国内外のあらゆる書物がある。
その中には白の魔法使いに関する本もあるはず。
ユリアは暖炉の前に行き、スープの加減を見た。
「いい感じ。」
美味しい料理ができると元気なるなぁ……。
スープをかき混ぜながら、ユリアはまた考える。
「トーマス様には白の魔法使いの事、言った方がいいよね?それが何かも調べたいし。」
トーマスなら白の魔法使いについて知っているかも知れないとも思った。
騎士団というのは、他の国にも遠征したりする。
遠征には王宮魔法使いも一緒に行く事も多いので、白の魔法使いという言葉を聞いたことがあるかもしれない。
ユリアは今夜トーマスが来たら、早速この事を言おうと決意した。
すると、結界魔法が微かに揺れた。
結界魔法をかけている時、ドアを誰かが叩くと少し揺れるように細工しておいたのだ。
ユリアは窓から顔を出した。
そこにはトーマスがいた。
「トーマス様!どうぞお入りください。」
トーマスはユリアに手を振って中に入る。
「ユリアさん。お待たせさました。ちゃんと大人しくしていましたか?」
「あ、あのう…それが…ちょっと料理を……」
「はぁ……そんな事だと思いましたよ。」
「トーマス様、何だか父親みたいですよ?ふふふ。」
「えっ!?父親?あ、いや、それは、ちょっと困るな……。」
トーマスは慌てて頭をかいた。
「冗談です!冗談!あれ?トーマス様、何か買ってきたんですか?」
見るとトーマスは沢山の食べ物を抱えていた。
「あ、そうなんです。ユリアさん、まだ料理は無理だろうからと思ってたので市場で色々買いました。でも好みが分からなかったので……気になったものを全部買ってきました。」
「全部ですか!」
「は、はい。」
テーブルに置いた食べ物は、山のようというのがピッタリだった。
串焼き、揚げたお肉、キッシュ、パン、タルト、クッキー……と沢山だった。
「とりあえず、今日食べなければいけない物を夕飯にしますね!」
「え?僕も一緒にですか?」
「もちろんです!こんなに買ってきたんですから責任持って食べていただかないと。」
「長居しても大丈夫でしょうか?」
この国は、結婚前の男女の交際はオープンな方だ。
結婚前に既に関係を持つ者も少なくない。
しかし、やはりそこは貴族であり騎士であるトーマス。
真面目が服を着て歩いているようなトーマスは
たとえ交際していても結婚前の女性の家に長居するのは…と心配している。
「あ、そうですね……でも、ご近所の皆さんは事情も知っていますし……。大丈夫だと思いますよ?」
「……そうですね……事情が事情だし。……では、ありがたくいただきます。」
「では、用意しますね!」
「じゃあ、僕はこれを運びます。」
なんだか……夫婦みたい……。
ユリアはちょっとだけ照れながら、トーマスと一緒に夕飯の準備を始めた。




