謎の夢
トーマスはユリアの作った野菜スープを飲んだ。
この味は心が温まる味だ……。
ユリアの料理はごく普通ではあるが、ホッとする味だ。
初めて食べたビーフシチューもそうだった。
心が安らぐ。
まさにそんな言葉がピッタリだった。
「トーマス様、おかわりはいかがですか?」
「はい、いただきます。」
ユリアがトーマスのお皿を取ろうとした時
トーマスが立ち上がった。
「僕がやります。」
「いえ!そんな事トーマス様にさせるなんて。私がやりますから。」
「ユリアさんは怪我人なんですよ?こんな時くらいは僕がやりますから。」
トーマスは頑として引かない。
ユリアは仕方ない…と手を引っ込めた。
食事が終わり、トーマスが沸かしてくれたお湯で紅茶を用意するユリア。
これは以前、紅茶専門店のオーナーが2人のためにと贈ってくれた特別なあの茶葉だ。
ふわっと広がる紅茶のいい香り。
この紅茶を前回飲んだ時、トーマスから告白をされた思い出がある。
ユリアがこの紅茶を選んだ理由は、今日これから大事な話をするからである。
ユリアは紅茶を丁寧に淹れて、トーマスに出した。
「ありがとう。」
「どうぞ。」
ユリアは紅茶をひと口飲んで、深呼吸した。
「あの、トーマス様。今日はお話があるんです。」
急に改まったユリアを見て、トーマスが首を傾げる。
「どうしたんですか?」
「はい……。えーと、何から話せばいいか。」
トーマスはユリアが話しやすいように
ソファに行こうと提案した。
ソファに移動した2人は並んで座る。
「あの小屋での事件の時、私はずっと夢を見ていたんです。」
「夢?」
「はい。最初の夢は白い雲の中に居て。母が居たんです。でも、母はこっちに来るなと。」
「ユリアさんの母上は亡くなっているんですよね?」
「ええ。だから、それは天国に来るなって意味だと思うんです。それから、母は私の力をあげるとも言っていました。その後は、母は居なくなってしまって…そこからは覚えていないんです。」
「力をですか?なんの力ですかね?」
「私も夢の中では分からなくて……それで次に見た夢なんですけど。また白い雲の中に居たんです。鳩に導かれて泉を見つけるんですけど、水がキラキラしているんです。」
トーマスは黙ってユリアの話を聞く。
「そしたら、鳩が真っ白い女神様に変身して。」
「女神?」
「それで、その女神様が私の母にお願いされたから私に白の力を与えるって。」
「白の力……。」
「ええ。泉の水を飲んだら身体がキラキラ光ったんです。女神様は、これから白の魔法使いとして生きろと言いました。それから私の母もそうだったとか……。」
「白の魔法使いですか……どういう意味でしょうね。」
「わかりません。とにかく、生き返った後は沢山の人を癒しなさいと。そこで目が覚めたんです。私はただの夢だと思ったんですが、私の傷の治りがこんなに早いのはそのせいではないかと。」
「確かに、ユリアさんの傷は驚異的な速さで回復していると医師も言っていましたね。」
「そうなんです。実は……私は昔から普通より魔法力が強かったんです。でも、母は魔法力が強い事を知られてはいけないと言い続けてまして。この家の結界魔法も普通のとは違うんです。」
「それはどう違うのですか?」
「結界魔法は普通は戦いの魔法なので、何も通さなくなります。私の場合は、その……この家や私に悪意があったり憎しみがあったりする物だけを拒みます。」
「僕は魔法力が弱い方なので、魔法については詳しくないんですが……それはかなり高度な魔法という事なんですか?」
「そうだと思います。私も魔法に関する勉強は一切禁じられていたので……どこまで高度かは分からないですが。」
「成る程……」
「この傷の事もあるし。私、白の魔法使いになったのではないか?と思うんです。もしかしたら、母も白の魔法使いだったのかも?」
「魔法使いの事に関しては、王宮魔法使いが詳しいと思いますが……下手に知られるのも良くないでしょう。王宮に図書館があります。そこで調べて見ますか?」
「はい!実はそのお願いをしようかと思って!」
「分かりました。では、近いうちに入れる様に掛け合いましょう。」
「ありがとうございます!」
実は、ユリアは少し心配だった。
トーマスに夢の話をしたら変に思われないだろうか?
しかし、トーマスはユリアの夢の話を真剣に聞いてくれた。
トーマス様が居てくれて良かった……。
ユリアは心からそう思った。




