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ユリアの不安

トーマスが奇声を発しながら宿舎に着いた頃

ユリアは店の中を1人ウロウロ歩き回っていた。


「物凄く好きです!」

トーマスの声が頭の中でこだまする。


「………………」


何というか、どう反応するしたら良いのだろうか。

初めての経験でどうしたらいいのか分からない。


「そうだ!こんな時は掃除!」


まずは、掃除でもして落ち着こう。

今はとにかく落ち着こう。


ユリアはブラシで一心不乱に床を磨き始める。

しかし、トーマスの顔がチラついて全然集中できない。


「凄く……好きです……って言われた……。」


ユリアは頭から湯気が出そうな勢いで恥ずかしくなる


「どうしよう……嬉しい……。」


ユリアが心のどこかで期待していた言葉。


今のユリアは、身分や肩書も忘れて、ただただ嬉しかった。

少し前まで恋という物を知らなかったユリアは

今、恋をしているとはっきり自覚する。


次にトーマスに会う時に

私も好きだと伝えよう。


例え、身分が違うという理由で許されなかったとしても、勇気を出して言ってくれたトーマスに私も勇気を出そうと心に決めた。




次の日の朝、ユリアはいつも通り

家の結界魔法を解いた。


ユリアは辺りを見回す。

しかし、いつも走ってくるトーマスの姿が見当たらない。


「今日は来ないのかな……。」


トーマスの事が気になりながらも

ユリアはお店の開店準備を始める。


しかし、昼になっても夕方になってもトーマスは姿を現さなかった。


「どうしちゃったんだろう……。」


ユリアは不安だった。


昨日、ああ言ってくれたけど

もしかして後悔してるとか?

あの時、ちゃんと答えるべきだった?


ユリアもまた恋の初心者であるが故に

トーマスと同じような不安な気持ちになっていた。


ユリアはお店の外に出て

何気なく辺りを見回す。

見回した所で、トーマスはやって来ない。


ふぅ〜とため息を吐きながらお店に戻ろうとした時

ポストに入っている手紙に気づく。



中を見てみると

それはトーマスからの手紙だった。


ユリアは驚いて急いで店に戻り

カウンターの椅子に座り手紙を開いた。



〜ユリアさん。

今、貴方にとても会いたいです。

でも、会うと貴方に伝えたい事も伝えられない自分が不甲斐ないと思っています。

だから、こうして手紙を書きました。


まずはユリアさんの気持ちも確かめず、想いを伝えた事をお許しください。


ユリアさんの気持ちが分からないまま

気持ちを伝えた事で、不安もあります。

しかし、後悔はしていません。

僕は不器用な人間なので、気の利いた事も言えません。でも、貴方を想う気持ちは自分の言葉で言いたかった。


心から貴方を想っています。


追伸 夜、会いに行きます。


トーマス・クリムト〜



いつ手紙を届けに来たんだろう?

全然気づかなかった。


ユリアは手紙を抱きしめる。


「良かった……。」


夜になるまでの時間がとても長く感じたユリア。

カフェのお客が途切れた所で、今日は早めの店じまいをする事にした。


外に出ると、すっかり日は暮れ

街の雰囲気も昼間とはだいぶ変わっていた。


カフェの前の道を仲良く手を組み歩く男女。

ユリアは今までならそれを見ても何も思わなかったが、今日はその姿さえも愛おしくなる程変化していた。


ふと、通りの向こうを見ると

そこには静かにこちらを見ている男性の姿が目に入った。


トーマスだった。


ユリアはトーマスににっこりと微笑み

またトーマスもユリアににっこりも微笑んだ。


トーマスがゆっくりこちらへ歩いてくる。

目の前まで来た所でトーマスは話しかけた。


「ユリアさん。」


「トーマス様。」


二人はしばらくお互いを見つめ合い。

そして、トーマスは言った。


「手紙読んでくださいましたか?」


「はい。読みました。とても……とても嬉しかったです。」


ユリアの頬は赤く染まっていた。


「トーマス様。今日はもう店じまいしましたので中にどうぞ。」


2人はゆっくりとカフェに入って行った。



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