指輪
トーマスとユリアは教会の近くの花畑を歩いていた。
「ユリアさん、もう笑わないでくださいよ。」
「ご、ごめんなさい……ふふふ。」
先ほどのブーケトスの時のトーマスを思い出して、また笑ってしまうユリア。
「これから事あるごとに言われそうだな。」
手を繋ぎ歩くトーマスは文句を言いながらもユリアの歩幅に合わせてくれていた。
ユリアはそんなトーマスの優しさが好きだった。
「でも、そんな可愛らしいトーマス様も好きですよ。」
「っ!!本当に……ユリアさんには敵いません。」
苦笑いをしながら歩くトーマス。
2人は池のほとりの東屋で少し休憩する事にした。
「プリアンヌさん、お幸せそうでしたね。」
「そうですね。とても嬉しそうだった。」
柔らかい春の風がユリアの頬を撫でた。
池の水がキラキラと光って輝いている。
「ユリアさん。」
「はい。」
「左手を出してください。」
ユリアの出した左手をそっと握るトーマス。
胸のポケットから小さな箱を出す。
「これは我が家に伝わる指輪です。」
そう言いながら、トーマスはユリアの薬指に指輪をはめた。
その指輪には、透明な石が沢山はめ込んであった。
「先日、母からこの指輪を受け取りまして。ユリアさんの大きさに直していました。少し遅くなってしまって…。」
「トーマス様……。」
「この石は、遠い国で獲れる石でして。大昔、一族の者がその国から持ち帰った石です。ほら、キラキラしているでしょ?」
ユリアは手を空にかざして石の光を見た。
石はキラキラと輝き、そして時折白くなったり金色になったりする。
「白や金に見えるでしょう?白金の魔法使いのユリアさんにピッタリの石だと思って。」
「はい、凄く綺麗です……。」
「婚約指輪として受け取ってください。」
「……ありがとうございます……。」
ユリアは涙で最後まで言えなかった。
何か言おうとしてもあとから後から涙が溢れて来て言葉にならなかった。
トーマスはそんなユリアを力強く抱きしめた。
「ユリアさん、必ず幸せにします。」
ユリアは涙をいっぱい溜めて答えた。
「私もトーマス様の為に頑張ります。」
「そんなに頑張らなくても大丈夫ですよ。今のままのユリアさんで居てください。」
「そんな!ダメです。」
「はははは。では、一緒に頑張りましょう。」
「はい。」
ユリアとトーマスはユリアの涙が止まるまでしばらく抱きあった。




