挨拶
街の中心部にある貴族のお屋敷街。
その中の一番奥にある家がクリムト家のお屋敷。
ユリアは今、そのクリムト家のお屋敷の居間にいた。
すごく緊張してきた……。
ユリアは手をギュッと握りしめて硬直していた。
トーマスはユリアに紅茶を勧める。
「ユリアさん、緊張しないで。昨日、母には会ったんだし。もう、大丈夫でしょう?」
「で、でも…また改めてご挨拶となると緊張しちゃいます。」
その時、居間のドアの向こうから声が出て聞こえた。
「あ、来ますよ。」
トーマスが言ったのと同時に入って来たのは、母のアンジェラだった。
「ユリアちゃーん!待ってたわよ!」
アンジェラは部屋に入ると勢いよくユリアのとなりに座った。
その拍子にトーマスは椅子から落ちた。
「おいおい!アンジェラ。ユリアさんが驚いているじゃないか。」
その後ろから現れたのは、程よいロマンスグレーに優しそうな笑顔の男性。
トーマスの父、カスタール・クリムトだった。
「少しは、僕のことも心配してもらいたいもんですね。」
トーマスは立ち上がって洋服を直しながら言った。
「あら、トーマス何やってるの?」
アンジェラはトーマスに気付いていなかったようで、きょとんとしていた。
ユリアは椅子から立ち上がり、精一杯の大きな声で言った。
「あ、あの!」
全員がユリアを見た。
「ユリア・エスタークと申します!不束者ですが、精一杯頑張ります!よろしくお願いします!」
ユリアは思い切り頭を下げた。
すると笑い声が聞こえて来て、ユリアは恐る恐る顔を上げた。
「ふふ、ふふふ。」
アンジェラは笑いながらユリアを座らせる。
「ユリアちゃん、そんなに硬くならないで?」
「そうだよ。ユリアちゃん、よろしくね。私はトーマスの父、カスタール・クリムトだ。」
そう言って、カスタールはユリアをアンジェラと挟むようにして座った。
「それにしても可愛いなぁ!なぁ!アンジェラ!」
「そうでしょ!貴方!可愛いわよね!」
「うちの嫁になってくれてありがとう!いやぁ、嬉しいなぁ。」
2人はどんどんユリアに迫ってくる。
「コホン!」
ふと見るとトーマスが腕組みして立っていた。
「ちょっと2人とも!ユリアさんを圧迫死させるつもりですか!」
「何言ってるの。そんなわけないじゃない。」
「だから、連れて来たくなかったんだ。ユリアさんが困ってるでしょう。ほら!離れてください!」
トーマスは2人を椅子から退かせて、ドカンとユリアの隣に座った。




