令嬢達の嫉妬
「セレニウム様!」
今まで興奮気味に話していた魔法使い達は一気に静かになってしまった。
「あ、あの。セレニウム様…」
ユリアが気を使って話そうとすると、セレニウムは大丈夫だと手を振った。
「今の話は本当です。ユリアさんのお母様のトロエ様は私より実力は上でした。」
「セレニウム様…」
「だからこそ、私は頑張れた。トロエ様を超えたいと一生懸命努力しました。今の私があるのは、トロエ様のお陰です。」
「そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。」
「ですから、皆さん!ユリアさんを目指して精進しなさい。貴方達は幸せです。白金の魔法使い様を見られるのですから。」
「「「は、はい!」」」
王宮魔法使い達は、背筋を伸ばして返事をするとそそくさと退散して行った。
その様子を見ていたセレニウムは、ユリアに言う。
「わたくしも貴方の力を見て、また頑張ろうと思いました。一度は穢れに付け入る隙を与えてしまいましたが、これからは妬む事なく精進したいと思います。本当にありがとうございます。」
「そ、そんな!ありがとうだなんて!私には勿体無いです!」
「トーマス殿。ユリアさんを大切に。この先ずっと清らかな気持ちで白の力が使えるように側で支えてあげてください。」
「はい。もちろんです。」
セレニウムはニッコリ微笑むと礼をしてパーティーから出て行った。
そんな中、ユリアの姿を見てヒソヒソと話す人間が居た。
貴族の令嬢達である。
ある令嬢がユリアを見て言った。
「白金の魔法使いだなんだと言っても、所詮は庶民の出でしょ?何だか地味な方ね。」
「本当に。ピットーニ家があんな事になって、得をしたのはあの魔法使いですわ。」
ヒソヒソと話す令嬢達。
そのほとんどがあわよくば貴族出身の騎士団の団員とお近づきになりたい者だった。
「このワイン…あの白金のマントにかかったらどうなるのかしらね。」
1人の令嬢が持っている赤ワインのグラスを見つめながら言う。
「あら、試してみてはいかがかしら?もしかしたら、魔法で弾くかもしれないわよ。」
「「ふふふふふ」」
笑いながら、ユリアに近づく令嬢達。
赤ワインを持った令嬢がユリアの方に歩いて行く。
その令嬢がグラスを落とそうと思った時、目の前にだれかが立ちはだかった。
「これはこれは、ご令嬢のみなさん。」
そこに居たのはエディだった。
その後ろには、婚約者のプリアンヌと妹のミュゼット。
エディは赤ワインを持つ令嬢に言った。
「そんなグラスの持ち方では、そのうち落としますよ。」
「エ、エディ様!」
その令嬢はすぐ表情を緩めて儚げな態度に変わる。
「まさかとは思いますが、ご令嬢のみなさんはこれを誰かにかけるおつもりだったとか?」
「い、いえ、そんな。」
「そうでしょうね!」
ミュゼットがすごい剣幕で前に出た。
「もし、白金の魔法使い様のマントにでもかかったら…貴方達は全員呪われるかもしれないですわよ。」
「えっ!」
令嬢達の顔色が変わる。
「ミュゼット、それはないよ。ユリアちゃんは心優しい人だ。でも、それを知った王様がお怒りになるかもな。」
令嬢達は、赤ワインを持った令嬢から離れて行く。
「え、え!みなさん!え?」
「ユリアさんはわたくしのお友達よ。今後こんな事したら、ただじゃおかないですからね。」
ミュゼットは赤ワインを持った令嬢にだけ聞こえる声で言った。
「私は…そんな…そんなつもりじゃ。」
赤ワインを持った令嬢は、そのまま会場の外へと逃げるように帰っていった。




