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『性欲と肉体のナイトゲーム』  作者: こうた
第5章 41歳の女性が教えてくれない答え

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第88話 好意と期待のすれ違い

十月二十四日、日曜日。


大野健太は、昨夜のひとみとの食事を思い返していた。


会話は楽しかった。


ひとみはよく笑い、健太の話にも興味を持ってくれた。


「話しやすいですね」


その言葉が、何度も頭の中で繰り返される。


(もしかしたら、俺に興味を持ってくれているのかもしれない)


そう考えると、自然と笑顔になった。


しかし、すぐに自分を戒めた。


話しやすいと言われただけで、好意があると決めつけるのは早い。


それでも、次に会いたい気持ちはあった。


     *


十月二十六日、火曜日。


昼休み。


ひとみからメッセージが届いた。


『先日はありがとうございました。とても楽しかったです』


健太はすぐに返信した。


『こちらこそ、ありがとうございました。また食事に行きましょう』


『はい。また予定が合えばお願いします』


健太は画面を見つめた。


また予定が合えば。


悪い返事ではない。


しかし、具体的な日程は決まっていない。


(これは脈があるのか、それとも社交辞令なのか)


健太は、返信を何度も読み返した。


その日の午後は、仕事に集中できなかった。


     *


十月二十八日、木曜日。


健太は、久しぶりに姉の真紀と電話で話した。


「ひとみさんとはどうなったん?」


「この前、二回目の食事に行った」


「それで?」


「楽しかったで。向こうも楽しかったって言ってくれた」


「よかったやん」


「でも、次の予定は決まってない」


真紀はため息をついた。


「また始まったな」


「何が?」


「相手の一言を分析する癖」


「いや、気になるやろ」


「気になるのは分かる。でも、相手の言葉の裏側を勝手に想像しても答えは出えへん」


健太は黙った。


「次に会いたいなら、普通に誘えばええやん。それで相手がどう返すかを見たらいい」


「断られたら?」


「断られることもあるやろ」


真紀はあっさり答えた。


「それが嫌で何も言わんのなら、ずっと分からんままやで」


健太は苦笑した。


     *


十月三十日、土曜日。


午後七時。


健太はひとみにメッセージを送った。


『もしよかったら、来月また食事に行きませんか?』


送信した後、スマートフォンを机に置いた。


返事を待つ時間は長く感じられた。


一時間後、返信が届いた。


『ありがとうございます。実は最近、仕事が忙しくて、しばらく予定が立てられそうにありません。また落ち着いたら連絡しますね』


健太の表情が曇った。


また落ち着いたら。


その言葉を、健太は何度も読んだ。


(断られたんかな)


しかし、確かめるようなメッセージを送るのは違う。


『分かりました。お仕事頑張ってください。また機会があればお願いします』


そう返信した。


ひとみからは、笑顔の絵文字が届いた。


そこで会話は終わった。


     *


十一月二日、火曜日。


仕事帰り。


健太は木村と駅まで歩いていた。


「ひとみさんとは?」


「しばらく会えないみたいや」


「そっか」


「忙しいらしい」


木村は少し考えてから言った。


「それなら、それでええんちゃうか」


「俺に興味がなくなったんかな」


「それは分からん」


木村は正直に答えた。


「本当に忙しいのかもしれんし、今は恋愛を進める気がないのかもしれん。どっちにしても、本人が言ってないことを決めつけたらあかん」


「そうやな」


「お前は、女性からの返事で一喜一憂しすぎや」


「分かってる」


「自分の生活も楽しめよ。恋愛だけが人生ちゃうで」


健太はうなずいた。


     *


十一月五日、金曜日。


午後九時過ぎ。


健太のスマートフォンに、思いがけないメッセージが届いた。


送り主は、佐藤まみだった。


『こんばんは。お久しぶりです。少し落ち着いてきました』


健太は、画面を見つめた。


連絡を控えたいと言われてから、約一か月。


彼女から連絡が来るとは思っていなかった。


『こんばんは。連絡ありがとうございます。少し落ち着いたんですね。よかったです』


返信すると、まみから続けてメッセージが届いた。


『息子のことも、少しずつ落ち着いてきました。元夫との話はまだ続いていますが、以前よりは冷静に考えられるようになりました』


健太は返信した。


『それならよかったです。無理はしないでくださいね』


少し間が空いた。


そして、まみから届いた。


『もしよかったら、またお会いできませんか?』


健太の胸が大きく跳ねた。


もう一度会いたい。


そう思っていた相手からの誘いだった。


しかし、健太はすぐに返事をしなかった。


嬉しさだけで予定を決めるのではなく、彼女の状況も確認したかった。


『もちろんです。まみさんの都合がよい日を教えてください』


『ありがとうございます。来週の土曜日なら、午後に少し時間が取れそうです』


『大丈夫です。楽しみにしています』


     *


その夜。


健太はベッドに横になりながら、二人の女性のことを考えていた。


ひとみとは、次の予定が決まらなかった。


まみとは、もう一度会えることになった。


自分の気持ちは、どちらに向いているのだろう。


ひとみとの出会いは楽しかった。


まみには、もっと知りたいと思う部分がある。


ただ、どちらの女性も、自分を好きになってくれると決まったわけではない。


健太はスマートフォンを置いた。


そして、心の中でつぶやいた。


(今度は、相手の気持ちを勝手に決めつけない)


そのとき、まみからもう一通メッセージが届いた。


『実は、今度会ったときに聞いてほしいことがあります。私自身のこれからについて、少し考えていることがあるんです』


健太は画面を見つめた。


彼女のこれから。


それは、自分との関係についての話なのだろうか。


それとも、まったく別の人生の話なのだろうか。


健太には、まだ分からなかった。

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