第61話 「そっくりな二人」俺は最初から間違えていた
二〇二一年五月一日、土曜日。
午前十時半。
俺は、駅前の喫茶店で木村を待っていた。
連休初日。
天気はよく、駅前には買い物客や家族連れが行き交っている。
今日は、木村の知り合いを紹介してもらう予定だった。
相手は、双子の姉妹。
木村によると、二人とも二十代後半で、姉がつかさ、妹がつばさという名前らしい。
「双子って、そんなに似てるものなのか?」
待ち合わせの時間まで、俺はスマートフォンで双子について調べていた。
顔がそっくりな人もいれば、雰囲気が違う人もいるらしい。
当たり前の話だ。
それでも、実際に会ったことがない俺には、想像するしかなかった。
午前十時四十分。
「悪い、待った?」
木村が現れた。
「いや、今来たところ」
「じゃあ、紹介するよ」
木村が振り返る。
その後ろから、二人の女性が歩いてきた。
一人は、肩まで伸びた黒髪に、淡いピンクのブラウス。
もう一人は、同じような顔立ちだが、髪を少し明るく染め、白いジャケットを着ていた。
目元も、鼻筋も、口元もよく似ている。
確かに、双子だった。
「こちらが、大野さん。前に話してた草野球をやってる人」
木村が紹介する。
「姉の、つかさです」
ピンクのブラウスの女性が、穏やかに頭を下げた。
「妹の、つばさです。よろしくお願いします」
白いジャケットの女性は、明るい声で笑った。
俺は、慌てて頭を下げた。
「大野健太です。よろしくお願いします」
その瞬間、俺は思った。
こんなに似ている二人と、どうやって話せばいいのだろう。
そして、もう一つ。
もし二人とも俺に好意を持ってくれたら、どうなるのだろう。
もちろん、そんなことが起こるはずはない。
まだ挨拶をしただけだ。
それなのに、俺の頭の中では、すでに二人分の未来が動き始めていた。
俺はまだ知らなかった。
この双子との出会いが、これまで以上に、自分の勘違いと向き合うことになるとは。
そして、そっくりな二人を見分けることよりも、自分自身の思い込みを見分けることのほうが、ずっと難しいということを。




