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『性欲と肉体のナイトゲーム』  作者: こうた
第7章 ゴルフ場の女神と高級クラブ

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115/116

第115話 プロフィール写真の奇跡

六月初旬。


大野健太は、スマートフォンの画面を見つめていた。


マッチングアプリのプロフィール写真を変更しようとしていた。


これまで使っていた写真は、三年前に撮影したものだった。


当時は今より少し痩せていて、髪型も整っていた。


「やっぱり、写真が古いんかな」


健太は自分の顔をインカメラで確認した。


頬のあたりが少し丸くなっている。


髪も以前より短く、表情には疲れが出ていた。


「まあ、悪くはないやろ」


自分に言い聞かせる。


健太は写真を撮り直すことにした。


休日の午前中、近所の公園へ出かけた。


草野球のユニフォーム姿ではなく、白いシャツに紺色のジャケットを羽織った。


鏡の前で何度も襟を直す。


「これなら、ちょっとはまともに見えるやろ」


公園のベンチにスマートフォンを置き、タイマーを設定する。


一枚目。


目をつぶっていた。


二枚目。


表情が硬い。


三枚目。


なぜか顎が上がっている。


四枚目。


背景に自転車が写り込んでいた。


「写真一枚撮るのも大変やな」


何度も撮影を繰り返し、ようやく納得できる写真が撮れた。


自分では、かなりよく写っていると思った。


帰宅すると、健太は写真をマッチングアプリに登録した。


プロフィールの自己紹介も少し変更した。


『休日は草野球やゴルフを楽しんでいます。性格は明るく、よく笑う方だと思います。将来は結婚して、家族で楽しく過ごせる家庭を築きたいです』


最後に、こう付け加えた。


『真剣にお付き合いできる方と出会えたら嬉しいです』


「完璧やな」


健太は満足そうに画面を閉じた。


その夜、何人かの女性に「いいね」を送った。


翌朝、通知が届いていた。


一件のマッチングだった。


相手は三十六歳の女性。


プロフィールには、事務職、旅行好き、休日はカフェ巡りと書かれていた。


健太は思わず声を上げた。


「おおっ!」


すぐにメッセージを送った。


『はじめまして!マッチングありがとうございます。プロフィールを見て、旅行がお好きなところに興味を持ちました。最近どこか行かれましたか?』


しばらくして返信が届いた。


『こちらこそありがとうございます。最近は京都に行きました。健太さんは旅行されますか?』


「よし、ええ感じや」


健太はすぐに返事を考えた。


『旅行は好きです。温泉とか、景色のいいところに行くのが好きですね。将来は結婚して、夫婦でいろいろな場所に行けたらいいなと思っています』


送信してから、健太は少し考えた。


まだ会話を始めたばかりなのに、結婚の話をするのは早かっただろうか。


しかし、すぐに自分を納得させた。


「真剣さが伝わる方がええやろ」


女性からの返信は、その日の夜に届いた。


『そうなんですね。私も旅行は好きです。ただ、まだお互いのことを知らないので、ゆっくりお話しできたらと思います』


健太は画面を見つめた。


「ゆっくりか……」


焦ってはいけない。


そう思った。


ところが、その翌日。


健太は彼女のプロフィールを何度も確認していた。


写真、趣味、自己紹介文。


何か共通点を見つけようとしていた。


そして、彼女がカフェ好きだと書いていたことを思い出す。


『今度、よかったらカフェに行きませんか?』


送信。


数時間後、返信が届いた。


『もう少しお話ししてからでもいいですか?』


まただった。


健太はスマートフォンを机に置いた。


「そんなに慎重にならんでもええやん……」


彼女には彼女のペースがある。


それは分かっているつもりだった。


しかし、健太には待つことが苦手だった。


自分が結婚したいと思っているのだから、相手にも早く判断してほしい。


そんな気持ちが、心のどこかにあった。


翌日、健太は藤井に相談した。


「なあ、マッチングアプリで写真変えたら、一人マッチングしたんや」


「おお、よかったやん」


「でも、食事に誘ったら、もう少し話してからって言われてな」


「普通じゃないか?」


「そうなんかな」


「まだ会ってもいないんだろ。相手も判断できないよ」


健太は腕を組んだ。


「でも、こっちは結婚を考えてるんやで」


「結婚を考えてるのは健太だろ。相手はまだ健太のことを知らない」


その言葉に、健太は黙った。


藤井は続けた。


「プロフィール写真がよく撮れても、会話が続いても、それだけで相手が結婚を考えるわけじゃないからな」


「分かってるって」


健太はそう答えた。


だが、帰宅後にはまた別の女性のプロフィールを検索していた。


一人に断られたら、次を探す。


次に期待する。


その繰り返しだった。


健太は写真を変更した。


少しだけ自信もついた。


しかし、写真が変わっても、健太自身の恋愛への向き合い方は変わっていなかった。


そして、スマートフォンの画面には、新しい女性のプロフィールが並んでいた。


健太はその中から一人を選び、また「いいね」を押した。


三十七歳。


結婚願望は強い。


恋愛経験はゼロ。


プロフィール写真だけは、少し若返った。

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