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『性欲と肉体のナイトゲーム』  作者: こうた
第7章 ゴルフ場の女神と高級クラブ

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第109話 彼女には大切な人がいた

2022年4月23日。


健太は、土曜日の午後にゴルフ練習場へ向かった。


来月のコースデビューに向けて、少しずつ練習を続けている。


以前よりボールに当たるようにはなったが、飛距離も方向も安定しない。


「まだまだやな……」


打席で一人つぶやいていると、隣に小野寺みほがやってきた。


「こんにちは」


「こんにちは。今日も練習ですか?」


「はい。来月のラウンドに向けて、少しでも慣れておこうと思って」


「いいですね。無理せず頑張ってください」


みほはバッグからクラブを取り出した。


その後、少し遅れて高橋りえもやってきた。


「みほさん、お待たせ」


「大丈夫ですよ。今日は混んでますね」


二人はいつものように準備を始めた。


健太は軽く会釈した。


「こんにちは」


「こんにちは、大野さん」


りえも笑顔で返した。


その日の練習は、いつもより賑やかだった。


田村たちも参加しており、初心者組はみほに基本的なフォームを教えてもらった。


「ボールを遠くに飛ばそうとしすぎない方がいいですよ」


みほが健太に言った。


「分かりました」


「まずは真っすぐ飛ばすことを目標にしましょう」


健太は教わった通りにスイングした。


ボールは少し右へ曲がったが、以前よりも安定している。


「今のはよかったですよ」


「ありがとうございます」


その様子を見ていた森川が、負けじとクラブを振った。


しかし、ボールは大きく左へ飛んでいった。


「森川さん、力が入りすぎていますよ」


みほが苦笑する。


「いや、今のはたまたまや!」


周囲に笑いが起こった。


休憩時間になると、りえはスマートフォンを確認していた。


画面を見た瞬間、彼女の表情が少し変わった。


「どうかしたんですか?」


みほが尋ねる。


「ううん。ちょっと連絡が来ただけ」


「例の人?」


「そう。今度の日曜日、会えることになった」


りえは嬉しそうに笑った。


健太はその会話を聞いていたが、詳しいことを尋ねることはしなかった。


その後、みほとりえは少し離れた場所で話し始めた。


「まだ付き合っているんですか?」


「正式に付き合っているわけじゃないけどね。もう何度も会ってるし、私としては大切な人だと思ってる」


「そうなんですね」


「ただ、相手は仕事が忙しくて、なかなか時間が合わないの」


りえは少し寂しそうに笑った。


健太には、その会話のすべては聞こえなかった。


ただ、りえには親しい男性がいるらしいということだけが分かった。


練習が終わり、健太たちは帰り支度を始めた。


松田がりえに話しかけた。


「高橋さん、来月のラウンドは参加できそうですか?」


「今のところ大丈夫だと思います。ただ、仕事の予定次第ですね」


「ぜひお願いします。僕たち初心者ばかりなので」


「私も教えられるほど上手ではないですよ」


りえは笑って答えた。


その後、健太はみほとりえに挨拶して帰った。


帰りの車で、松田が話し始めた。


「高橋さん、ええ感じの人やな」


「そうやな」


健太は曖昧に返した。


「ゴルフも上手いし、道具もええもん使ってるし、余裕がある感じがするわ」


「人それぞれやろ」


藤井が言った。


「それに、さっき誰かと会う約束してたみたいやで」


健太が何気なく言うと、松田は少し驚いた。


「そうなんか?」


「詳しくは知らんけどな」


「まあ、あれだけ綺麗な人なら相手がおっても不思議じゃないか」


藤井はそこで話を終わらせた。


健太も、それ以上考えないことにした。


その夜、美咲からメッセージが届いた。


『今日は仕事で少し疲れました』


健太は返信した。


『お疲れさまです。ゆっくり休んでくださいね』


『ありがとうございます。健太さんは今日は何をしていましたか?』


『ゴルフの練習に行ってきました』


『最近、本当に頑張っていますね』


健太は少し嬉しくなった。


『まだまだ初心者ですけどね』


『続けていることがすごいと思いますよ』


その言葉に、健太は画面を見つめた。


以前なら、こうした言葉を特別な好意だと受け取っていたかもしれない。


しかし今は、相手が自分を褒めてくれたことを、そのまま受け取ろうと思った。


『ありがとうございます。美咲さんも無理しないでくださいね』


短く返信して、スマートフォンを置いた。


翌週、健太は会社で木村と昼食を取っていた。


「最近、ゴルフばっかりやな」


「新しい趣味ができたからな」


「ええやん。そういうのは大事やで」


木村は笑った。


「ところで、三浦さんとはどうなん?」


「映画に行ってから、たまに連絡してるよ」


「次の約束は?」


「まだ決まってない」


「お前から誘ってみたらええやん」


健太は少し考えた。


「そうやな。もう少し話してみて、タイミングを見て誘ってみる」


木村は頷いた。


「自分の気持ちを伝えるのは大事や。でも、相手の返事もちゃんと受け止めるんやで」


健太はその言葉を胸に刻んだ。


恋愛もゴルフも、思い通りにはならない。


高級なクラブを持っていても、必ず良いスコアが出るわけではない。


相手に好意を持っていても、必ず同じ気持ちが返ってくるわけではない。


健太は少しずつ、その当たり前のことを学び始めていた。


そして、来月のゴルフ当日。


高橋りえが連れてくる人物によって、健太たちの人間関係は思いがけない方向へ動き始める。

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