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『性欲と肉体のナイトゲーム』  作者: こうた
第7章 ゴルフ場の女神と高級クラブ

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第103話 初めてのゴルフ練習場

2022年3月20日。


日曜日の午後、健太は田村、森川、石田、藤井の四人とゴルフ練習場に向かっていた。


車の中では、森川が妙に張り切っていた。


「ゴルフはな、野球と同じでフォームが大事なんや。俺は昔から運動神経がええから、すぐ上達すると思うで」


「森川、お前は野球でもフォームを気にしすぎて、まともに投げられへんかったやろ」


藤井が笑いながら突っ込む。


「それとこれとは別や!」


健太も笑った。


ゴルフはテレビで見る程度で、実際にクラブを握った経験はほとんどない。


野球をやっているから、ボールを打つことくらい簡単だろう。


最初はそんなふうに考えていた。


しかし、練習場に到着してクラブを握ると、思っていた以上に難しかった。


「なんで当たらへんねん!」


森川が空振りをした。


石田はボールを打ったものの、目の前のネットに届くかどうかという低い弾道だった。


健太も何度かスイングしたが、ボールの上を叩いたり、クラブの先に当たったりしていた。


「野球とは全然違うな」


田村が笑った。


「野球はバットを振るけど、ゴルフはクラブの角度もあるからな。力任せに振ったらあかん」


そのとき、隣の打席から女性の声が聞こえた。


「最初は力を抜いた方がいいですよ」


振り向くと、三十代前半くらいの女性が立っていた。


落ち着いた雰囲気で、黒いウェアに身を包んでいる。


女性の打席には、見たこともないような高級そうなゴルフクラブが並んでいた。


「ありがとうございます。初心者なもので」


健太が答えると、女性は軽く笑った。


「私も最初は全然当たりませんでしたよ。慣れるまでは難しいですよね」


「そうなんですね」


「でも、野球をされているなら、体の使い方は覚えやすいかもしれませんね」


その女性は自分の打席に戻り、きれいなスイングでボールを打った。


ボールは高く上がり、遠くのネットに向かって飛んでいった。


健太は思わず見入った。


「すごいですね」


「ありがとうございます」


女性は笑顔で会釈した。


それだけだった。


しかし、健太の頭の中では、すでにいくつもの想像が始まっていた。


(ゴルフが上手で、雰囲気もいい。こんな女性と知り合えたら……)


そのとき、藤井が健太の肩を軽く叩いた。


「おい、ボール見ろ。女性のスイングばっかり見てたら上達せんぞ」


「見てないって」


「分かりやすいな、お前は」


練習が終わる頃には、健太の腕は疲れ切っていた。


帰り際、先ほどの女性が受付付近でスタッフと話していた。


田村が女性に声をかける。


「こんにちは。よく来られるんですか?」


「はい。週に一度くらいです」


「私たちは今日が初めてなんです。初心者ばかりで」


「そうなんですね。楽しんでください」


女性は丁寧に答えた。


田村が自己紹介をすると、女性も名前を教えてくれた。


「私は佐々木えりかです。よろしくお願いします」


「大野健太です。今日はありがとうございました」


「こちらこそ。練習頑張ってくださいね」


えりかはそう言って帰っていった。


健太はその後ろ姿を見送った。


「ええ人やったな」


森川が言う。


「ゴルフも上手やしな」


石田も頷いた。


健太は何気なく尋ねた。


「佐々木さんって、独身なんかな?」


藤井がすぐに反応した。


「お前、もうそこを気にしてるんか」


「いや、ちょっと気になっただけや」


「本人から聞いてもいないことを勝手に想像するなよ」


「分かってるって」


藤井は少し真面目な表情になった。


「ゴルフを教えてくれたからって、親しくなりたいと思ってるとは限らん。向こうは普通に話しかけただけかもしれんぞ」


健太は黙って頷いた。


帰宅後、健太はインターネットでゴルフクラブを調べた。


初心者向けのセットから、有名メーカーの高級モデルまで、価格はさまざまだった。


十万円を超えるセットも珍しくない。


(こんなに高いんか……)


健太は画面を眺めながら考えた。


少しでも上手くなりたい。


えりかのようにきれいなスイングをしたい。


だが、クラブを買えば上達するわけではない。


それに、今はまだ続けられるかどうかも分からない。


健太は高級クラブの購入画面を閉じた。


まずは練習を続けてから考えればいい。


その夜、美咲からメッセージが届いた。


『この前話していた映画の続編が公開されるみたいですね』


健太は嬉しくなり、すぐに返信した。


『本当ですね。もし時間が合えば、一緒に観に行きませんか?』


送信した後、スマートフォンを机に置いた。


今度は、返事を急かさない。


相手の都合も気持ちも、自分の期待だけで決めない。


健太はそう自分に言い聞かせた。


数時間後、返信が届いた。


『いいですね。公開されたら予定を確認してみます』


健太は笑顔になった。


ただし、まだ約束が決まったわけではない。


そのことも、以前よりは冷静に受け止められるようになっていた。


一方、ゴルフ練習場で出会った佐々木えりかのことも、頭の片隅に残っていた。


健太は知らなかった。


えりかが通っているゴルフスクールには、彼女とはまったく違う価値観を持つ女性がいて、近いうちに自分たちの練習グループと関わることになることを。


そして、その女性が使っているクラブは、えりかのものよりさらに高価なものだった。

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