◆第67話:運命のくじ引きと、柱の上の高見せ
「うわぁぁぁ……! 予選とは比べものにならない熱気ですね……っ!」
翌朝、本戦の舞台となるメインスタジアムに足を踏み入れた瞬間、ウーがその圧倒的なスケールに歓声をあげた。
超満員の観客席、重厚な貴族席、そして中央の王族用特別観覧席。
ふと見上げれば、スタジアムの天井近くにそびえる巨大な石柱の頂上に、一匹の黒猫が優雅に毛繕いをしながらこちらを見下ろしていた。
(ネロの奴……あんな特等席から高みの見物かよ。相変わらず優雅なもんだな)
俺が呆れ半分で苦笑いしていると、背後からカツカツと高らかなヒールの音が近づいてきた。
「あら? Fランクの雑種たちが、まさか本当に本戦の舞台まで上がってくるとは思いませんでしたわ」
振り返ると、そこにいたのは華やかな公爵家の意匠を施したドレス甲冑に身を包んだエリザベート先輩だった。
特徴的なドリルツインテールをフンと揺らし、腕を組んで上から目線で俺たちを見下ろしてくる。
「まあ、予選突破くらいは褒めて差し上げてもよろしくてよ。ですが……浮かれるのはそこまでですわ!」
エリザベート先輩はビシッと扇子を俺たちに向けて突きつけた。
「我が公爵家の誇りにかけて結成したこの『グランド・デューク』と当たるまで、くだらない相手に負けるんじゃないわよ! 覚悟しておきなさいな!」
ツンツンと高飛車に言い放つと、彼女はフンと横を向いて優雅に去っていった。
「ふふ、相変わらず素直じゃないなぁ、ドリル先輩♪」
「あ、あれって……応援してくれてるんですかね……?」
リアンがニシシと笑い、ウーが小首を傾げる。
「まあ、あいつなりのハッパの掛け方(=お約束のツンデレ)だな」
直後、会場の中央でトーナメントのくじ引きが行われ、巨大な魔導スクリーンに本戦ベスト8の全トーナメント表がデカデカと映し出された。
【本戦トーナメント表】
◆ Aブロック(俺たちの山)
・第1試合:『ヴォイド・シフル』(1・2年混合) VS 『栄光の道』(2年アルファクラス)
・第2試合:『グランド・デューク』(エリザベート率いる公爵家チーム) VS 『聖剣の誓い(オース・オブ・ブレイド)』(3年精鋭)
◆ Bブロック(逆サイドの山)
・第3試合:『ザ・インペリアル』(第2王子率いる優勝候補) VS 『疾風の牙』(2・3年混合)
・第4試合:『アマゾネス』(3年女子限定) VS 『マッスルマッスル』(3年筋力特化男子)
スクリーンを見上げた俺たちは、思わず息をのんだ。
「へぇ……相手は2年アルファクラスの『栄光の道』か。名前からしてエリート意識が高そうだな」
「ほんとだ……! 周りは上級生や有名なチームばかりですね……っ!」
「へへっ、燃えてきたね! 見てよゼロ、第1試合で『栄光の道』に勝てば、準決勝ですぐにドリル先輩の『グランド・デューク』と当たれるよ!」
リアンが嬉しそうに拳を握りしめ、ウーもキュッと表情を引き締めた。
「相手は2年のアルファクラス……上級生のエリートチームですね。油断できません……っ!」
「ああ、だが俺たちのチームワークなら絶対勝てる! まずは1回戦、速攻でブチ破るぞ!」
「「おーーーーっ!!」」
柱の上のネロが「なー(見ものだな)」と楽しそうに尾を振る中、俺たち『ヴォイド・シフル』の初戦が刻一刻と近づいていた。
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