◆第65話:1年エリート貴族と『おやくそく』の呪い
いよいよ予選突破(本戦進出)をかけた第5試合。
特設リングの対向側から現れたのは、絢爛豪華な意匠の装備を纏った4人組――1年生の最上位クラス「アルファクラス」の特待生&凄腕貴族チームだった。
先頭に立つ高慢な笑みを浮かべた少女――リーダー格の貴族令嬢が、扇子で口元を隠しながらこちらを見下してくる。
「あら……何だかと思えば、Fランクの雑種パーティ『ヴォイド・シフル』ではありませんの」
「くっ……アルファクラスの生徒たち……!」
ウーが身を縮こまらせる。相手の陣容は剣士に重騎士、回復術師とスキのないエリート構成だ。
「ここまでの勝ち上がりも、どうせ『剣聖』リアン先輩のおかげなのでしょう? そちらの魔法使いも少しは芸を見せていたようですけれど……この私の氷結魔法の足元にも及びませんわ!」
貴族特有の高飛車な態度と、自らの実力に対する絶対的な傲慢さ。
令嬢はフンと鼻を鳴らすと、扇子でチラリと俺を指し示した。
「本戦を前にして手こずるのも不愉快ですわね。……まずは、あの後ろで何の役にも立っていない『汚い男』から片付けますわよ!」
「「おーっ!」」
(ありゃりゃ……絵に描いたような王道のお約束展開だな……!)
今まで前衛に立たず、完全に「何もしない男」に徹していた俺に狙いを定めてきた相手チーム。
だが、その瞬間――俺のスキル『おやくそく』が静かに牙を剥く。
【条件達成:『無力な主人公への一斉攻撃&フラグ建築』】
【スキル『おやくそく』発動――確定イベント:『ゼロに関わった者の強制自滅ハプニング』】
俺はフッと怪しい笑みを浮かべ、あえて一歩前に出ながら低く呟いた。
「へぇ……俺からやるんだ? 後悔しないといいけどな……」
「な、なんですのその意味深な言い草は……!? ハッタリに決まっていますわ! 行きなさい!」
令嬢が一瞬ゾクッと背筋を凍らせながらも命令を下し、前衛の剣士と重騎士が俺に向かって突進してきた!
「死ねッ、Fランクの足手ま――ぐはぇっ!?」
「うおっと!?」
突如、何もないリングの上で足元を激しく滑らせた剣士が滑落!
そのはずみで掲げた大剣が、すぐ後ろを走っていた重騎士の兜にゴスッと直撃し――重騎士はそのまま勢い余って剣士の上にド派手に重なって転倒した。
「な、何をやっているのですかこのバカ者たちはーッ!?」
令嬢が怒号を飛ばし、自ら杖を掲げる。
「ええい、あの不気味な男ごと吹き飛ばして差し上げますわ! 極大氷結弾、放て――ひやぁぁっ!?」
怒りに任せて放とうとした極大魔法だったが、直前にゼロが見せた意味深な笑みが頭をよぎって動揺し、魔力操作を大幅に誤爆!
魔法陣が自身の足元でバチバチと破裂し、令嬢と後ろの回復術師は自分の氷魔法で足をガチガチに凍りつかせられてしまった。
「「「な、なんですのこの男……ッ!? 関わるとロクなことが起きませんわぁぁぁーーーっ!?」」」
「……へ? 俺、マジで何もしてないんだけど?」
俺がとぼけて首を傾げると、完全に戦意を喪失したアルファクラスチームは涙目でギブアップを宣言したのだった。
「……ゼロ、今のはさすがに相手がかわいそうだったかも」
リアンが苦笑いしながら肩をすくめる。
「ぜ、ゼロさん……敵に手を触れさせずに自滅させるなんて、やっぱり何か恐ろしい呪いを使ってるんじゃ……っ!?」
ウーが引きつった顔でじりじりと距離を取ってくる。
「いやだから日頃の行い(=おやくそく)だってば!」
俺が胸を張ると、試合終了のベルが盛大に鳴り響き、『ヴォイド・シフル』の予選5連勝・本戦進出が決定したのだった!
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