◆第52話:高慢なドリルと、頭の上の所有権
「それじゃあウーちゃん、私の剣の振りにあわせて『ファイア』のタイミングを合わせてみて!」
「はいっ、頑張ります……っ!」
演習場でリアンとウーが仲良く連携の練習をし、俺がネロを頭に乗せたままそれを眺めていた、まさにその時だった。
「――あら? そこのお聞きになりませんこと?」
高飛車で鋭い高笑いとともに、カツカツとヒールを鳴らして近づいてくる影があった。
振り向くと、そこには縦ロール状に綺麗に巻かれたドリルツインテールを揺らす金髪の美少女――見るからに高貴そうな意匠の制服を着た3年生の令嬢と、その両脇を固める二人の取り巻き女子生徒が立っていた。
「わ、エリザベート先輩……!?」
リアンが小さく息をのむ。どうやら学院内でも有名な高位貴族の令嬢らしい。
「ふん、最近1年生の間で妙な噂が流れていると思えば……平民のFランクが頭の上に猫を乗せて歩いているというのは、貴方のことですのね?」
高慢な笑みを浮かべたエリザベート先輩は、取り巻きを引き連れて俺のすぐ前までやってくると、扇子をパチンと閉じて俺の頭の上を指差した。
「ですが……まあ! 近くで見ると、なんて愛らしくて気品のある毛並みなの……っ!」
一瞬間を置いて、エリザベート先輩の目が輝いた。ツンとした態度を一変させ、食い入るようにネロを見つめてくる。
「たしかに可愛いですわね! ……このような素晴らしい猫が、Fランクの貧相な平民の頭の上にいるなんて見苦しいと思いませんこと!?」
「は……?」
いきなりの言いぐさに俺が呆気にとられていると、エリザベート先輩は胸を張り、偉そうに人差し指を突きつけてきた。
「決まりましたわ! その猫、私に寄越しなさい! 私のような公爵家の令嬢に飼われる方が、その猫にとっても幸せというものですわ!」
「「ええーーーーっ!?」」
理不尽すぎる言い分に、リアンとウーの叫びが演習場に響き渡った。
当のネロはというと――エリザベート先輩の熱い視線を浴びながら、「ふぁぁ……」とこれ以上ないくらい面倒くさそうなあくびを噛み殺すのだった。
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