◆第50話:予期せぬ金一封と、黒猫の名付け
しばらくして奥から戻ってきた受付嬢さんは、興奮冷めやらぬ様子で革袋をカウンターに置いた。
「鑑定の結果、間違いなく状態極上の『ルーン草』でした! 薬草とスライム討伐の報酬に加えて、ルーン草の特別買取金を合わせ……合計で金貨五枚となります!」
「「「き、金貨五枚!!?」」」
新人向けFランク依頼の報酬としては、破格を通り越して異常な金額だ。俺たちは目を丸くしながら、重みのある革袋を受け取った。
「これ……いきなり大金持ちになっちゃったんじゃない!?」
「すごいです、ゼロさん……! ルーン草のおかげですねっ」
思わぬ臨時収入に気分の良くなった俺たちは、その足で王都の賑やかな居酒屋風食堂へと向かった。
テーブルいっぱいにご馳走を並べ、ジュースや果実酒のグラスを掲げる。
「それじゃあ……『ヴォイド・シフル』の初依頼大成功と、大収入を祝って――乾杯!」
「「乾杯ーーーっ!!」」
グラスを打ち鳴らし、美味しい料理に舌鼓を打つ。
一通りお腹を満たしたところで、リアンが俺の頭の上で肉の切れ端を美味しそうにハムハムしている黒猫を指差した。
「ねえねえ! 初依頼も無事に成功したことだし、そろそろこの子の名前、しっかり決めようよ!」
「そうですね! いつまでも『猫ちゃん』って呼ぶのも味気ないですし」
ウーも笑顔で賛同する。俺は頭の上の小さな身体を下ろすと、膝の上に乗せて考え込んだ。
「名前か……黒いし、ストレートに『クロ』とかはどうだ?」
「なー(ゲシッ)」
黒猫はあからさまに嫌そうな顔をして、ペシッと俺の手を前足で叩いた。安直すぎたらしい。
「じゃあ……渋めに『スミ』とか?」
「なー(プイッ)」
ぷいっと横を向いてそっぽを向く黒猫。
「うーん……『ごま』とか可愛くないですか?」
ウーが提案してみるも、黒猫は「ふしゅー」と不満げに鼻を鳴らすばかりだ。
「こだわり強いなぁ、この子……。じゃあさ、『ネロ』っていうのはどう? なんだか響きがシュッとしててかっこよくない?」
リアンが思いつきで口にしたその瞬間――
「なーーーっ!!(それだー!)」
黒猫の瞳がパッと輝き、勢いよくリアンの膝の上に飛び乗って「スリスリ……っ!」と激しく頭を擦り付け始めた。
「お! 反応が全然違う! 『ネロ』が気に入ったみたいだな!」
「ふふ、ネロちゃん……響きもかっこよくて可愛いです!」
「やったー! 気に入ってくれたんだね、ネロ!」
頭を撫でられて嬉しそうに「なー♪」と喉を鳴らすネロ。
こうして、俺たちのパーティ『ヴォイド・シフル』に、最強(?)のマスコット・ネロが正式に仲間入りしたのだった。
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