◆第48話:ただの猫じゃない!?と、秘密の約束
一瞬の出来事だった。
空中ではじけた四匹のスライムの余韻が消え去る中、黒猫はクルリと一回転してトタッと俺の頭の上に着地。
そのまま「ふぁぁ……」と優雅にあくびを噛み殺すと、何事もなかったかのようにすっぽりと髪の毛に収まり、再び丸くなってしまった。
「「「………………」」」
静まり返る森の中。
俺とリアン、そしてウーの三人は、ただただ口をアングリと開けたまま呆然と佇んでいた。
「……ねえ、ゼロ」
真っ先に静寂を破ったのはリアンだった。ひくひくと眉を震わせながら、俺の頭の上を指差す。
「今の……見間違いじゃないよね? スライム四匹を一瞬で細切れにしたよね……?」
「わ、私にも見えました……っ! 風の刃のような爪の軌道で……一瞬でした……っ!」
ウーも目を丸くして、信じられないものを見るような視線を頭の上の黒猫に注いでいる。
「絶対ただの猫じゃないよね!? ていうかCランクの私より身のこなし素早かったんだけど!?」
「まあ……うん。俺も普通の猫じゃないとは薄々思ってたけどさ……」
俺は額を押さえて深いため息をついた。
(これ絶対アレだろ……ライトノベルの『おやくそく』だよな。最初はただの可愛いマスコットかと思わせておいて、実は伝説の魔獣とか邪神の化身とか、バカ強い隠しキャラの奴……!)
頭の上で「なー」と暢気に鳴く黒猫。見た目はどう見てもただの愛くるしい黒猫なのだが、秘めたスペックが完全にバグっている。
「で、どうする……? この子の凄まじい強さ、ギルドに報告する……?」
リアンが不安そうに尋ねてくる。
ウーも心配そうに俺の顔を見つめた。
「もしこんな凄まじい力を持った猫だって知られたら、研究者とか偉い人に引き離されちゃうかもしれません……」
「……だよな。よし、決めた」
俺は頭の上の小さな頭をポンポンと優しく叩いた。
「この猫が強いのは、俺たち三人だけの秘密にしよう。ギルドには『ただの迷い猫を拾った』で押し通す。いいな?」
「うんっ! それがいいよ! ヴォイド・シフルの秘密兵器(?)だね!」
「はいっ! 私も絶対に秘密にしますっ!」
二人が力強く頷き、黒猫も「なー(よく分かってるじゃないか)」と誇らしげに胸を張ったような気がした。
「よし! 薬草も手に入ったし、スライムも倒した! 初依頼達成だ! ギルドへ報告に行こう!」
「「おーっ!」」
こうして、規格外の「お供」を隠し持った俺たち『ヴォイド・シフル』は、記念すべき初依頼の達成報告へと向かうのだった。
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