◆第46話:森の入口と、転がり落ちた大発見
ギルドで無事に『ヒール草の採取』依頼を受理した俺たちは、王都の南門を抜けて街道沿いの森の入口へとやってきた。
木漏れ日が心地よく差し込む道を歩きながら、リアンが満面の笑みで俺の腕にすり寄ってきた。
「それにしてもさっきのゼロ、すっごく格好よかったよー! 私のためにあんな勢いで怒って殴り飛ばしてくれちゃってさ~! えへへーっ!」
「いや、別にお前のために怒ったっていうか……手が勝手に動いたというかだな……」
完全にラブラブモード全開で抱きついてくるリアンに、顔が熱くなるのを隠せない。
隣を歩くウーも頬をほころばせながら、素直な瞳で俺を見つめてきた。
「本当に凄かったです、ゼロさん! あの大きな冒険者さんを一撃なんて……すごく頼もしかったですっ」
「うぐっ……二人とも褒めすぎだって……」
これ以上弄られると危険だと察した俺は、ゴホンと小さく咳払いをして、無理やり話題を切り替えた。
「ほ、ほら! そろそろこの辺りから薬草が生えてるんじゃないか? 探してみようぜ!」
「あはは、ゼロ照れてる~! はいはい、お仕事お仕事!」
ニシシと悪戯っぽく笑うリアンを横目に、俺たちは受付嬢から聞いていたアドバイスを思い出しながら周囲の草むらに目を凝らした。
(受付のお姉さん、確か『薬草は大きな木の根元や、陰になった湿り気のある場所に生えやすい。街の近くだと採り尽くされてて群生なんて滅多にない』って言ってたな……)
そう思いながら、何気なく大木の裏側の湿った茂みを覗き込んでみた――その時だった。
「……あ、あった! おい二人とも、ヒール草の群生だ!」
「ええっ!? 街のすぐ近くなのに群生!? すごいよゼロ!」
「本当ですね……! こんなにたくさん一度に見つかるなんて驚きです!」
運良く(あるいは『おやくそく』で)あっさりと規定量以上のヒール草を採取できた俺たちは、見晴らしの良い大きな木の下でシートを広げて一休みすることにした。
「ふぅ、お腹減った~! ギルドの売店で買ってきたサンドイッチ食べよう!」
「はい、お茶も淹れましたよ」
竹かごから香ばしいパンの香りが漂い、腹が鳴る。
俺がサンドイッチを手に取り、まさに口へ運ぼうとした――その瞬間だった。
「なーっ!」
「わっ!?」
頭の上で寝ていたはずの黒猫が唐突に飛び降り、俺の手元にダイブしてきた。
バランスを崩した俺の手から、包み紙に入ったサンドイッチがコロンと零れ落ち、そのまま緩やかな斜面をコロコロと転がり落ちていく。
「ああっ!? 俺の昼飯がーーー!?」
「あはは! ゼロ、食べ物運なさすぎでしょ!」
「待ってください、すぐ拾いますっ!」
転がっていくサンドイッチを追いかけて、茂みの深い場所へと足を踏み入れた俺たち。
斜面の底で止まっていたサンドイッチを拾い上げたその時、俺の目にふと奇妙な植物が飛び込んできた。
(――ん? なんだこれ……?)
そこには、他の雑草に混じって、一本だけ青銀色に怪しく光り輝く見たこともない珍しい草がひっそりと生えていた。
「どうしたの、ゼロ? サンドイッチあったー?」
「ああ、飯は無事だったんだけど……なぁ、これ何だと思う?」
俺が指差した先を見て、リアンとウーが首をひねる。
「うーん……見たことない草だね。ヒール草とは全然違うし……」
「なんだかすごく綺麗な光ですね……。ほんのり魔力も感じます」
「一本だけポツンと生えてるな。何だか分からないけど、せっかくだしこれも採ってギルドに持って行ってみるか!」
謎のレア草を一本慎重に採取した俺たち。
頭の上に戻ってきた黒猫が「なー」と満足げに鼻を鳴らす中、俺たちの初依頼は思わぬお土産を手にギルドへの帰り道につくのだった。
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