◆第42話:名前は持ち越し、甘いひととき
「名前、どうしようかー……」
俺は頭の上の黒猫を下から見上げるようにしながら唸った。
「うーん……『クロ』とか『ネロ』とか……いや、安直すぎるか。かと言って『漆黒の破壊神』みたいな大層な名前にするのも違うしなぁ」
「あはは! ゼロ、ネーミングセンス独特すぎ! 『漆黒の破壊神』は絶対ダメだよ!」
お腹を抱えて笑うリアン。ウーも「ふふっ」と楽しそうに口元を押さえている。
「まあ、すぐには決まらないし、名前は後でじっくり考えよう! 適当につけるのも可哀想だしね」
「そうだな。じゃあ名前は持ち越しってことで」
頭の上の黒猫も「なー(異議なし)」と一口鳴いて合意したようだ。
ふとギルドの大きな大時計を見上げると、針はすでに夕方に差し掛かろうとしていた。
「うわっ、なんだかんだでかなり時間経っちゃったね!」
リアンが時計を仰ぎ見て声をあげる。
「洋服屋さんも寄れるには寄れるけど……結局この猫ちゃんも頭に乗ってるし、今日は落ち着いてお店に入るのも難しそうだよね」
「そうですね……。お洋服選びは、また後日の楽しみにしますっ!」
ウーが優しく微笑みながら頷く。イメチェンしたボブカットが、夕方の日差しを浴びてキラキラと輝いていた。
「よしっ! じゃあ今日は洋服の代わりに、オシャレなカフェで美味しいケーキ食べて帰ろう! ウーちゃんのイメチェンお祝いと、パーティ結成のお祝いってことで!」
「ケーキ……! いいですね、すごく楽しみです!」
ウーの瞳が一気にパッと輝く。
「決まり! 王都で一番人気のスイーツショップ知ってるから、案内するね! レッツゴー!」
頭の上に謎の黒猫(名前保留)を乗せた俺と、ウーの変身に大満足のリアン、そして新しい自分に少し照れながら歩くウー。
『ヴォイド・シフル』の初日は、甘いケーキの香りと賑やかな笑い声に包まれながら、賑やかに暮れていくのだった。
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