◆第41話:頭の上の居場所と、ちいさな家族
「えー……これ、どうするんだ……?」
俺は頭の上の重みを感じながら、困り果てて両手を広げた。
ギルドの依頼に該当がないとなると、この黒猫は単なる野良猫か、あるいは依頼すら出されていない迷子ということになる。
だが、どれだけ降ろそうとしても俺の頭にしがみついて離れないこの状況は変わっていない。
すると、リアンが頭の上の黒猫に顔を近づけ、目を輝かせながら提案した。
「えーっ、いいじゃんいいじゃん! ゼロから全然離れないし、すっごく懐いてて可愛いんだから、このまま飼っちゃおうよ!」
「飼うって……簡単に言うなよ。俺たち男子寮だし、寮で動物が飼えるかもわからないだろ?」
「大丈夫だって! いざとなったら私の寮部屋でこっそり隠して飼うし! ねえ見てよ、こんなに気持ちよさそうにしてるんだよ?」
リアンが差し出した指先に、黒猫は「スリスリ……」と頭を擦り付け、満足そうに瞳を細めている。
ウーもそっと近づくと、嬉しそうに目を細めて黒猫の背中を優しく撫でた。
「ふふ、本当ですね……。すごく大人しくて、お利口さんな猫ちゃんです。ゼロさんの頭の上、よっぽど居心地がいいんですね……っ」
「ウーまで……。はぁ、でも放置するわけにもいかないしな……」
思案に暮れる俺たちを見て、受付嬢がおだやかな笑みを浮かべながら助言をくれた。
「ふふ、仲がよろしいですね。こういった『該当依頼なし』の迷い動物の場合、保護された拾い主様がそのまま引き取られるケースはとても多いんですよ。もちろん、ギルドでお預かりすることも可能なのですが……」
「お預かり、ですか?」
俺が聞き返すと、受付嬢は少し困ったように眉を下げ、言葉を選びながら続けた。
「はい。ただ、一定期間を過ぎても飼い主様が現れず、引き取り手も見つからなかった場合は……専門の保護施設へと送られることになりますね」
「保護施設……」
どこか寂しげな響きに、ウーの顔が少し陰り、リアンも「えっ……」と心配そうに眉をひそめた。
「なー……」
まるで自分の立場を分かっているのかいないのか、頭の上の黒猫は呑気に小さく鳴いて、俺の髪に鼻先をうずめてきた。
手元に伝わる、温かくて小さな命の鼓動。
「……はぁ、参ったな」
俺は深いため息をつき、頭の上の小さな頭を優しく撫で下ろした。
「仕方ないか。これだけ離れないし、なんだかんだ言っても可愛いからな。寮のルールはなんとか調べるとして、俺が責任持って飼うよ」
「本当!? やったぁーーー!」
リアンが飛び上がって喜び、ウーもパッと表情を明るくして胸の前で手を合わせた。
「良かったです……! ゼロさん、すごく優しいですね……っ!」
「よしっ、これで『ヴォイド・シフル』の正式なマスコット決定だね! 名前はどうする、ゼロ!?」
「名前か……そうだな……」
俺の頭の上で満足そうに「なー」と鳴く黒猫を見上げながら、俺たちは新たな家族(?)を迎えた喜びを噛みしめるのだった。
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