◆第40話:忘れ去られた珍客と、消えた依頼
バッジをどこにつけるかキャッキャと話し合っていたその時――
ウーが不意にゼロの頭頂部を見上げ、「あッ……!」と小さく声をあげた。
「どしたの、ウーちゃん?」
リアンが首をかしげると、ウーはオロオロと両手を振りながらゼロの頭を指差した。
「ね、猫ちゃんのこと……すっかり忘れてました……っ!」
「「あっ……!!」」
俺とリアンの声が綺麗にハモった。
プレートやバッジ、そしてパーティ結成の大騒ぎですっかり頭から抜け落ちていたが、当の黒猫は俺の頭の上で「すやすや……」と丸くなって気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「いやあ、すっかり忘れてたわ……。そういえばリアン、掲示板の探し猫の依頼はどうだったんだ?」
俺が尋ねると、リアンはうーんと腕を組んでうなった。
「それがねー、探し猫の依頼自体は結構な数あったんだけど……それらしい黒猫の依頼は見つからなかったんだよね。途中でゼロたちのことで騒ぎになっちゃったから、全部は見切れてないんだけど……」
すると、二人のやり取りを聞いていた受付嬢が、俺の頭の上の黒猫をじーっと見つめながら話に入ってきた。
「迷い猫捜索の依頼ですか? ……その頭の上の猫ちゃんでしょうか?」
「はい、実は裏路地でついてきて、頭から離れてくれなくて……。心当たりの依頼ってありますか?」
受付嬢は手元の依頼一覧の台帳をめくり、黒猫の姿と見比べながら首をひねった。
「うーん……黒猫ちゃんの捜索依頼自体は何件か届いているのですが、毛並みや目の色、首輪の有無などの特徴を照らし合わせてみても……その猫ちゃんに当てはまるようなものは、見当たらないですねー」
「えっ、当てはまるのがない……!?」
「はい。特徴が一致する依頼は一例もございませんね」
受付嬢の言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
「なー(ふぁぁ……)」
当の黒猫は、呑気に大きなあくびを噛み殺すと、再び俺の髪の毛にすっぽりと顔をうずめるのだった。
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