◆第37話:結成!ヴォイド・シフル
「けっ……『剣聖』さんよー、そうは言ってもそんなワケ分からんネタスキルじゃなー」
リアンの威圧に一瞬呑まれたものの、顔を真っ赤にした荒くれ者の一人が、意地を張るように鼻で笑った。
「そうだそうだ。あんたがソロで強いのは認めるが、そんな足を引っぱりそうなFランクのガキを庇いながら戦うなんて無理だろ?」
「なっ……! 言わせておけばっ……! むかむかむか……っ!」
腰の長剣に手をかけ、今にも荒くれ者たちに飛びかからんばかりに髪を逆立てるリアン。
俺は慌てて彼女の肩をぽんと叩いた。
「リアン、怒ってくれてありがとな。でも俺は全然気にしてないから、ほっとこうぜ」
「でもゼロっ! あんな言われよう黙ってられないよ!」
「いいんだって。それよりも、探し猫の依頼は見つかったか?」
俺が話題を切り替えようと尋ねると、リアンはふーふーと肩で息をしながら俺を睨みつけ、そして――ガシッと俺の両肩を掴んできた。
「ダメだゼロ! 私、もう我慢できない!」
「え……?」
「よし、決めた! 今日で私の『ソロ』は終わり!」
「「ええっ!?」」
俺とウーの声が綺麗にハモる。
「もともとゼロが学院に来て冒険者になるまで待ってただけなんだからね! このまま三人でパーティ登録しちゃおう!」
リアンはニシシと満足げに胸を張り、隣のウーに向かって弾けるような笑顔を向けた。
「ウーちゃんも入るでしょ!?」
「えっ……私っ!? 私なんかが、リアン先輩とゼロさんのパーティに入ってもいいんですか……!?」
「当たり前じゃん! 『並列思考』の天才魔法使いなんだから大歓迎だよ!ね、ゼロ?」
「俺は願ったり叶ったりだけど……急展開すぎるだろ」
苦笑いする俺の前に、リアンはドヤ顔で人差し指を突き立てた。
「ふふん! 実はね、ゼロと一緒に冒険者になったら使おうと思って、前からパーティ名も考えてあったんだから!」
「パーティ名……?」
受付嬢も、周りで聞き耳を立てていた荒くれ者たちも、思わずゴクリと唾を飲み込む。
リアンは一息吸い込むと、王都ギルドのホール全体に響き渡るような声で叫んだ。
「その名も――『ヴォイド・シフル』!!」
「「「………………」」」
一瞬の静寂。
(ヴォイド・シフル……!? 直訳すると『虚無』と『ゼロ(数字の0)』……!?)
「カッコいいでしょ! ゼロの『ゼロ』と、私の響きが好きな単語を組み合わせたんだー!」
自慢げに胸を張るリアン。
俺はあまりの中二病全開なネーミングセンスと、その直球すぎる愛の(?)主張に、頭の上の黒猫と一緒に再び深く顔を覆うのだった。




